acte-Zéro
拙作をお手に取って頂き、ありがとうございます
こちらは、こつめが初めて書いた物語です
完結まで書き終えていますので、最後までお付き合い頂けますと嬉しいです
◎更新は0時、8時、16時の1日3回です
◎1話毎の文字数や展開によって複数話更新することがあります
王都の下町で母と二人。
慎ましくも楽しく暮らしていた私と母の生活が一変したのは、私が10歳を迎えてすぐのことだった。突然身なりのいい男性が訪ねて来たと思ったら、母に向かって言ったのだ。
「アーガン伯爵家の侍従長をしております、ベントリーと申します。旦那様がお二人をタウンハウスにてお待ちです。案内致しますのでご同行願います。」
言葉自体は丁寧だけれど有無を言わせない態度に、母は真っ青になりながらも抵抗した。まだ幼かった私には何が起きているのか分からない。ただ、母が行きたくないと思っていることだけは分かった。戸惑いながら母を見上げると、彼は静かに続けた。
「断られても構いませんが、後日また日を改めることになるかと思います。」
息を呑んだ母は項垂れると私の手を握り、彼の後に続いて家を出た。用意された馬車に乗り込むと彼の向かいに母と二人、並んで腰掛ける。すぐに馬車が走り出したことで言いしれぬ不安が押し寄せた。そんな私を母は抱き寄せると優しく髪を撫でながら「大丈夫よ。大丈夫。」と何度も囁いた。
まるで自分自身に言い聞かせるような母に、返事ができない。アーガン伯爵家のタウンハウスに着くまで、私は母に縋り付くことしかできなかった。
あれから三年。
私は13歳になった。
今、私には愛する人がいる。
その人の名はエリオット・アーガン。
私のお兄様。
そう。
私はお兄様を愛している。




