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散策奇  作者: 呉万層
9/10

あめりかへ

 もぐら男のおかげで、存外簡単に、わたしはあめりかに渡ることができた。



 マクシミリアン亭で出会ったモノクル男に、黒い輝きを放つ一本足の丸い生物を渡すことで、話をつけてくれたのだ。



 丸い生物について聞くと――



「お前の中に眠る何か大切なモノだ」



 と、言っていたので、益々気になったのだが、それ以上は怖くて聞けなかった。



 修行が足りないと、わたしは反省した。



 モノクル男から紙切れを受け取ったもぐら男は、わたしの手を引いて、昏い廊下の分岐をすさまじい速さで駆けて行った。



 そうして、わたしは昏い廊下の先にある、やはり暗い港から貨物船に乗ったのだった。



 長いようで短い航海のあと、わたしはあめりかの人となった。



 港に降り立つ。



 館の中でも、あめりかはやはり広かった。



「ここは夏う~。ずっと夏さぁ~。人を幸せにしてぇ~狂わせるのさぁ~」



 廊下の壁は先が見えぬほどで、天井にはサングラスをかけた太陽が、低音で常夏をたたえる曲を歌っていた。



「F言語。F言語!」



「ニューヨーク市警! 海兵隊! テロ! 銃乱射!」



「フェンタニル! カルテル! ヒスパニック! ライフル協会!」



 どこまでも続く廊下の中の道路には、白人と黒人とヒスパニックが、よくわからない言葉をがなり立てていた。



 アジア系もいたが、無視されながら黙々と歩いたり商売をしたりして、普通に暮らしていた。



 誰もが、きっと幸せなのだ。



 間違いない。ここはあめりかだ。



 わたしは、廊下のあめりかで、なんだか楽しくなっていた。

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