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散策奇  作者: 呉万層
8/10

もぐりや

 パスポート取得を諦めたわたしは、廊下で途方に暮れてみることにした。



 困ったときは、とりあえず失望も露にしながら座り込むに限る。



 お尻がヒンヤリとして気持ちいい。



 むろん、体温の変化を気にしているヒマはないはずだが、わたしの心に、乱れはなかった。



 ただ途方に暮れていただけだった。



 何もしないでいても仕方がないので、わたしは、とりあえず立ち上がった。



 周囲を見ると、わたしと同様に、座り込んだり立ったり座ったりする者たちで、廊下はにぎわっていた。



「運命が、そなたを導くであろう」



 わたしの横で途方に暮れていた老婆が、ポジティブな預言めいた言葉を紡いだ。



「運命?」



「そうさ。あそこにいるやつだよ」



 老婆が指し示す方向に、顔の長い男がいた。



 顔の長い男は、ニヤニヤと笑っていた。



 わたしは、顔長男に尋ねる。



「どちら様で」



「もぐら男さ。みんなからは、そう呼ばれている」



「もぐりやではなくて?」



 わたしの工夫のないツッコミを受けても、もぐら男は、動じない。



「そうともいう。でもなぁ名前なんて、小さなことだ。俺様の本質は変わらない」



「名前もあなた自身では?」



「かもな。でも違う。重要なことは、俺様がお前さんを、あめりかへ送ってやれるってことさ」



「お願いします!」



 わたしは、ダボハゼのように、飛びついた。



「いいだろう。実は俺様、結構親切だ。あと運命だ」



 そういうことになった。



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