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数日後、勉強会の部屋には拓海、玲奈、陳、そして有村という四名の専門家が集まった。大きなホワイトボードには、拓海が描いたパルスの観測波形と、玲奈が記録してきた量子ゲート実験のログが並べられている。


「銀河系外で何らかの知的生命体が実験をしていて、その影響が地球にも量子的に伝わっていると考えるのは、さすがに突飛すぎるかもしれません。でも過去の天文データを調べると、1960年代から断続的に似たパルスがあったとの報告もあるんです」


拓海の言葉に有村がうなずく。


「さらに、そのパルスの到来時期と地球の科学技術の飛躍が妙に一致しているのよ。もちろん、後付けの解釈かもしれない。けど、一度検証する価値はあるわ」

陳は腕組みをしながら、ホワイトボードの数式をしげしげと眺めていた。 「実際にこれを検証するとしたら、どうやる?」


「次にパルスが到来すると予測される時間帯に合わせて、玲奈が研究している量子ゲート装置を使った通信実験を試みるんです。量子もつれペアを使って送受信のプロトコルを設定して……宇宙規模の“量子テレパシー通信”が成立するかどうか、試してみる」


有村はさらりと言うが、実施は簡単ではない。エラー率も高いだろうし、パルスと同期するための精密なタイムスケジュールが必要になる。


「パルス到来はあと三週間後が予測されます。時間は、今の計算だと正確にはプラスマイナス数分の誤差があるくらい」


「三週間か……」と玲奈は小さくつぶやく。


十分な時間があるとは言い難いが、チャンスはそれしかない。


陳はしばらく沈黙していたが、やがて深く息をつき、口を開いた。


「本当にやるのか? 実験に失敗すれば、量子ゲートに負荷がかかりすぎて取り返しのつかない事故を引き起こす可能性がある。君たちも覚悟はできているか?」


四人はそれぞれ顔を見合わせた。そして陳自身もまた、興味を隠しきれない表情を浮かべている。

玲奈は意を決して言葉を放った。


「やります。リスクは承知の上です。これは学問への挑戦ですから」

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