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8.出逢い

ビンランが拠点を離れてから3日経った。

拠点で縄を作っているとピーー!という甲高い笛の音がした。

この音はこの前来た冒険者のアンが訪ねる時に

合図として鳴らすと言っていた音だ。

気配を探ると以前女の子を送った村の近くにアンの気配を感じる。

何の用だろうと思い向かってみる。


アンさんの元に到着すると、少女と二人で待っていた。


「こんにちは。本当に来てくれたのね。」

「こんにちは。良く通る音ですね、遠くの拠点でも聞こえましたよ。」

「ほら、メイあんたが言ってた魔物ってこいつでしょ。」


そういって後ろに隠れている女の子を前に出す。

女の子は恥ずかしそうにしながらおずおずと出てくる。

助けた女の子はあれから成長していて小学校中高年ぐらいになっていた。


「お久しぶりですお嬢さん、私はファンタジアンと申します。」

「こ、こんにちは、メイです。」


あいさつを返してくれた。

どうやら恐怖で怯えているわけではなさそうだ。


「た、助けてくれてありがとう。」

「どういたしまして。」


指を近づけてメイちゃんと握手する。


「良ければお二人を住処にご案内したいのですが……。」

「ほんと~!」


メイちゃんは乗り気だがアンは何か思案している。

しばらく考えた後、答えが出たのか口を開く。


「じゃあ、御邪魔させてもらおうかしら。」

「ではご案内しますね。」


2人を抱えて拠点に戻る。

拠点に着くとビンランが使っていた椅子や机を出す。

中央の焚火に火をつけていく。

その間2人は拠点を見回していた。

メイちゃんは刺さってる2本の槍を見上げている。

アンさんは肉の解体所や洞窟の中などが気になるらしい。

槍を抜いてメイちゃんの前に置くと一生懸命持ち上げようとしている。

解体していた肉を焚火で焼きながら話をする。


「何か気になる物はございますか?」

「普段何を狩っている?」

「岩イノシシを狩っていますね、後は剣山シカですね。」

「毛皮とか角ってもしかして捨ててる?」

「ええ、特に必要ないですし。」

「良かったら譲ってもらえないかしら、

もちろん何かと交換させてもらいたいのだけど。」


いつも使い道がなくてその辺に破棄していたので、

利用価値ができるのはうれしい。

それに村と交流ができるのもうれしい。


「それはうれしい提案です。

喜んで受けさせていただきます。」

「と言ってもあまり物資はないのだけど。」

「野菜なんかと交換していただけると嬉しいですが難しいですかね?」

「あなたのお腹が膨れる程はないはね。」

「少しでも交換していただけるだけでうれしいです。」


そんな感じで交渉をしているとメイちゃんが近づいてきた。


「お姉ちゃん、あの棒重くて持ち上がらなーい!」

「私より長いんだもの当り前じゃない。」


嬉しそうにアンさんに抱き着いてメイちゃんは報告すると、

頭を撫でながらアンさんは答えていた。

仲のいい姉妹のようだ。

焼けた串肉を皿にのせて机に置く。


「岩イノシシの肉が焼けましたのでどうぞ。」

「ありがとう、いただくわ。」

「いただきまーす。」


2人がおいしそうに食べてるのを見て自分も食べ始める。


「先ほどの交換の話ですが、どこか交換所を用意しませんか?」

「いいけど、どうして?」

「ここまで来ていただくのも遠いですし、

私がいきなり村を訪ねるのも驚かれるでしょうから。」

「あぁ、確かにそうね。」


この姿ではおそらく村人に恐怖されてしまうだろうし、

慣れてもらってから訪ねるようにしたい。

なのでとりあえずは交換所を用意させてもらおう。


「それなら普段休憩所にしている場所があるから、後で案内するわ」

「わかりました、よろしくお願いします。」

「これからも遊べるの?」

「えぇ、時間が合えばですけれど。」

「わーい、お肉ー!」


そういえば会うたびにお肉あげていたな……。

まあ蓄えはあるし別にいいんだけれど。


「あんたもお肉もらうんなら何か交換しなさい!」

「えー、お花の冠でもいい?」

「駄目よ、ちゃんと一緒に考えてあげるから用意しなさい。」


そんな感じで楽しく話した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


森の中、私の目の前には1人の男性が立っている。

野菜を積んだ荷台をつかむ手は震えている。


「ザッカスさんこの人?が話してたファンタジアンよ。」

「初めまして、ファンタジアンです。

よろしくお願いします、ザッカスさん。」


そう話しかけるとザッカスさんはブンブンとうなずくだけだ。

仕方ないので持ってきた肉や皮に角を降ろすと、

アンさんはその物品の観察を始める。


「見させてもらってもいいかしら?」

「ええどうぞ。

ザッカスさんもよけれがどうぞ?」


そう声掛けしてもザッカスさんは立ったままで動かない。

仕方ないのでアンさんと会話する。


「皮は加工技術がないので剥いだままです、角は持ってきましたけど、

骨は必要かわからなかったので持ってきていません。」

「骨も使うから次は持ってきてもらえると嬉しいわ。」

「わかりました。

こちらも欲しいものを考えておきました。」

「野菜以外に何かあったかしら?」

「板材や縄などの加工した材料が欲しいのです。

あと、野菜の種も欲しいです。」

「それなら大丈夫ね、どれぐらい用意できるかは確認してから回答させて。

全部確認させてもらったわ、問題なし。

こっちの荷物も確認してちょうだい。」

「わかりました。」


そう言って2人で荷台に目線を向けると、

ザッカスさんはやっと動き出してゆっくり荷台から離れる。

荷台に近づいてみると葉物や根菜など色々な野菜が乗っている。

この体になってからほとんど食べていなかった野菜が食べれそうでうれしい。


「いろいろな野菜がありますね!」

「喜んでもらえてうれしいわ。村で作ってる野菜10種類ぐらい持ってきたわ。」

「うれしいです。これで料理の幅が広がります。」


手に取ってみると品質も悪くなさそうだ。


「こちらも問題なしです。交換成立で良いでしょうか?」

「ええ、こちらも大丈夫よ。ありがとう。」

「こちらこそありがとうございます。」


こうして初めての貿易は成功した。

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