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7.別れ

漁村の災害から1か月がたった。

あれから定期的に村を訪ねていた。


「ファンタジアン様、本当にありがとうございます。」

「これである程度、増水に対して持つだろう。」


今日は近くの川が氾濫しないように治水工事をした。

先日は村と山の間に壁を立てて土砂を受け止めるようにした。

そんな感じでここ最近は土木工事を行っている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「村にずいぶんとなじんだな。」

「これだけ通えばなぁ。」


そんな会話をしながら森で狩りをしていた。

ビンランや村人たちに信用してもらう為に、

いろいろ助力するように頑張っていた。

その成果か今では物々交換もしたりしている。

そんな風に進んでいると気になる反応を見つけた。


「先ほどから誰か付けてきている?」

「人間の集団、冒険者か?」


冒険者か、こちらのことを狙ってきているのか?

このまま追跡されるのもめんどくさいのでこちらから接触しようかな。


「接触してみるか。」

「好きにすればよい。」


ビンランも特に止めてこないので気配のする位置に突撃する。

どうやらこちら動きに気が付いたのか移動をやめた。

森を縫って進み冒険者たちの前に姿を現す。

冒険者は5人組でこちらに武器を構えていた。

2人は弓で残りは剣をかまえていた。


「私に何か御用ですかな?」


そう話しかけるが怯えているのか震えている。

いつ飛びかかてきてもおかしくない。

仕方ないのでこちらから再度語り掛ける。


「私の名前はファンタジアン、この森にすむ者です。」

「わ、我々は冒険者チーム:豊穣の鎌だ。」

「初めまして、豊穣の鎌の皆さん。

して、私に何か御用ですかな?」


俺がそう聞くと、リーダーなのか受け答えしてくれた男が回答してくれた。


「我々は最近東の森で起きている異常現象を調査しに来たんだ。」

「異常現象……?」


そうつぶやいて思い当たるものに気が付いた。

それはビンランと模擬戦を行ったときに、

落雷を大量に落としたりしていたのだ。

おそらくあれのことだろう。


「私の落した落雷の事でしょうか?」

「ああそうだ、晴れているのに何度も落雷が発生しているのの調査だ。

近隣の村から調査依頼が出ている。」


それは悪いことしてしまったな。

そういえば子供を村に返してから気にしてなかったな。


「それは申し訳ないことをしました。」

「いや、被害は出ていないから……。」


相手はこちらが下手に出ると思っていなかったのか、

困惑して歯切れの悪い感じになっている。

どうしたものか……。


「そろって黙って何をしている」


そう言いながらビンランが頭から降りてくる。

突然人が下りてきたので冒険者たちが驚いて構えなおす。

胸元から何かドックタグのようなものを出しながらビンランが挨拶する。


「ゴールドランクのビンランじゃ」


冒険者たちが驚きながらドックタグを確認すると、

どいうやら本物だったのを確認したのだろう矛を収めた。

ビンランも冒険者だったのか。


「ゴールドランク……しかもドラゴンなんて初めて見ました。」

「まあそうであろうな。」

「この……ファンタジアンはテイムしているのですか?」

「ワシが?そんなんわけあるか、友人だ。」


友人と思ってもらえていてうれしい。

どうやら、ビンランが代わりに説明してくれるらしい。


「こいつはこの森に最近生まれた者でな、

たまたま知り合ったもので今一緒に暮らして()る。」

「落雷を起こしていたのは」

「ワシとの模擬戦の時に起こしたものだな。

特に悪さもしていないし問題なかろう。」


そう自信満々に説明しているが、

効いている冒険者たちは半信半疑のようだ。

まあ、こんな怖い生き物が落雷起こしまくってるとか怖いよな。

そんな感じでどうしようかなと思っていると、

弓を構えていた少女に話しかけられる。


「ねえ、昔女の子を村に返したことある?」

「えぇ、あります。」

「それ、私の妹なの……ありがとう。」

「いえ、無事送り返せてよかったです。」

「アンよ、よろしくねファンタジアン」


まさかあの時の女の子の縁がここでつながるとは。


「あなたは何者なの?」

「ガランという生き物のようですが……。

他に仲間がいるわけではないのでよくわからないのですよね。」

「そう、村に悪さをしようとはしていないのね?」

「ええ、今はあの大山の山頂でのんびり生活しています。」


そんなん話をしているとビンランも会話に入ってくる。


「1年ほど共に過ごしているが、特に人への悪意とかはないな。」

「そうですか、なら安全ということで良いのでしょうか。」

「ワシはそう判断しておる。」


どうやらビンランの言葉は信頼されているのか、

駆除はされないで済みそうである。

……ビンランがいなかったら大変なことになっていたのでは?


結局ビンランが冒険者たちと話し合い、

問題はないということで落ち着いた。

去り際、アンさん訪ねるといって去っていった。

ビンランのおかげで人類と敵対することはなさそうだ。


「ファンタジアンよ、どうやらわしもここを去らねばならないようだ。」


拠点の帰りの際にビンランがそんなことを言い始めた。


「なんで?」

「いや、お主のことを説明するために王都に行かなくてはと思ってな。」

「それは、ありがとう。」

「それに、友人のエルフに会わねばならんしな。」

「それは早く行ってあげて……。」

「なに、あ奴も長寿故気にしておらんだろ1年ぐらい」


そうかこの世界のエルフも長寿な種族なのか。

時間間隔がずいぶんと違いそうだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


思ったが吉日と次の日の朝にはビンランは発つ準備をしていた。


「そんなに急がなくてもいいのに。」

「そういっているといつまでも発てんからな。」


荷物を背負いながらそう話すビンラン。

1年も一緒にいたから別れはさびしい。

そんな俺を見てビンランは慰めてくれる。


「そう寂しそうにするな。

お前も長寿な種族だ、また会えるさ。」

「寂しいものは寂しい……。」


そういうと、頭を撫でられる。

そして手を離すと、そっと距離を置いてドラゴンの姿に戻る。


(ではまたな!ファンタジアン!)


そう言ってビンランは西の空に飛んで行った。

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