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6.共生

(お主、名は何という?)

(名前……)


名前か……、前世の名前名乗るのもなぁ。

ハンドルネームもニャホニャホタマクローだったし……。

なんて名乗ろうかな、ファンタジーな名前か。


(ファンタジアンと言います)

(わしはビンラン、しばらくお前を見定め支えてもらうぞ)


そういうとドラゴンは光り輝いて小さくなる。

そして光が収まった。

そこには軽装の鎧を着た少女が立っていた。

瞳孔が縦に長く、首の辺りにも鱗があったりと

所々違うが人間が立っていた。


(人間に変身した!)

(ドラゴンの秘術だ)


驚いて顔を近づけてまじまじと見つめる。

自分よりデカかったのに今は1.5m程しかない。

魔法でこんなこともできるのか。


(さて、とりあえず飯にしようか)


取り合えずうなずいて住処に案内する。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


イノシシ肉を焼きながら雑談をする。


(そういえばなんでこの森に来たんだすか?)

(古い知り合いに会いに来たのだ)


肉にかぶりつきながら答えてくれる。

かなり健啖家で結構な量を食べている。


(この森にもドラゴンが?)

(いや、この東の森にはいないな。

大陸にはいるかもしれんが。

友人はエルフでな、この大陸の都市にいる。)


やっぱり人の大勢いる都市があるのか。

大山の山頂からは見ることができないが、いつか訪ねてみたいな。


(人間に変身出来たら訪ねてみたいな)

(人化はドラゴン以外に出来ぬから難しいかもしれんな)


ガーンだな。

この体で訪ねるのは難しいよな~。

何かいい方法はないものか。


(ビンランさんはどれくらい生きているんですか?)

(わしは2000年程生きておる、神話時代からな。

お前さんは生まれてどれぐらいなのだ?)

(3年近く前ですね。)


正直この世界が365日で1年なのか知らないが

季節は2回めぐってきているので、おおよそあっているだろう。

ビンランさんの2000歳なのは驚きだ。

この世界の神話も気になる。

そのうち聞いてみようかな。


(さて暗くなるうちに寝床を作るかの)


そう言うとビンランさんはテントを組み立て始める。

戦いの直前に荷物を森に落としていたらしく、

ここに来る前に改修しておいたのだ。

テントや食器など旅の道具が入った大きなカバンだ。


手慣れた手つきであっという間にテントを組み立てると、

荷物をしまい込み始めた。

仕舞い切ると最後に顔だけ出してビンランさんは言った。


(改めてよろしくのファンタジアン)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ビンランと過ごし始めてから1ッ月が過ぎた。

朝日と共に活動を開始するビンランに起こされる。


(これファンタジアンよ、起きんか!)

(あと5分……)


寝ぼけて返事をすると石を投げられた。

イテッと声をあげながら洞窟から出る。

近くの川で顔を洗い眠気を飛ばす。

一緒に過ごすうちに敬語もいらないといわれ、

今はかなりフランクに話すようになった。


(本日は漁に出るといっておったが?)

(久々に魚なんかが食べたいからね。)


ビンランが来てからは森でしか狩りをしていなかったから、

魚を捕りに海に行こうと昨日提案したのだ。

漁村があると話したらビンランが寄りたいというので、

寄り道してからになるが。


(朝飯を食ったらすぐ出るのだ、さっさと済ませよう。)

(ふぁい)


あくびしながら返事したらにらまれた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


朝飯を済ませ移動を開始する。

ドラゴンのまま村に行ったら驚かれるので、

ビンランは人型のまま頭にのせて移動する。

前と同じく、3時間程で漁村のある砂浜についた。

村民たちは突然現れた俺に驚きはしても悲鳴を上げてはいない。

ビンランを降ろすと村の中心に歩いていく。

村の奥からは村長らしきお年寄りが出てきてビンランと話し始めた。

相変わらず何を言っているかは全くわからない。


(ファンタジアン、わしはしばらく村で過ごす。

漁は一人で行ってきてくれ。)


何やら話が盛り上がったのか話が長引くらしいので一人で漁に出る。

前と同じように気配を探り、デカナポレオンフィッシュを5匹程仕留めた。

大量に喜びながら浜に戻ると、ビンランは話が終わったのか浜辺で一人待ってた。


(どうやら大量だったようだな。)

(大物が取れたよ。)


ビンランに釣果を見せ、すぐに捌く。

慣れた作業なので、すぐに終わる。


(ビンラン、村に1匹あげると伝えてくれ。)

(わかった。)


ビンランが近くの村人に伝えてくれたので、魚を1匹置いて帰る。

帰り道ビンランに村で何をしていたのか聞く。


(お前について聞いておった。)


そういえば、素行調査をされているんだった。

なるほどな……。


(まあ、船乗りたちを助けたり、

今日みたいに魚を分けてもらっているといった良い話ばかりだったぞ。)


魚に関しては持ち帰れない分を置いて行っているだけなのが習慣化しているだけなのだが。

村から悪印象を受けていないのならよかった。

これからもちょくちょく寄っていくようにしよう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ビンランと過ごし始めてから1年が過ぎた。

その間いろいろなことを教えてもらった。

まずは言語だ。

念話は基本的に1対1のうえ村民が使えず、

一方通行な会話になってしまうため覚えた。

他にはこの大陸についてだ。


この大陸はゲータリア大陸と呼ばれ、

神話時代の戦争の舞台になった土地らしい。

かつて魔王と呼ばれる存在が神の軍勢と戦い滅ぼされ封印された。

壮絶だったらしく大陸の中心にはその時にできた大きなクレーターがあり、

魔王もその中心に今も封印されているらしい。


その時代にいたのが俺の種族:ガランらしい。

当時はかなり混沌としていたらしく、

様々な生命体がひしめき合っていたらしい。

しかし、戦争の影響で絶滅した生物が大勢いたようで

ガランもそのうちの一つということだったらしい。

多分ビンランの話し方から害悪過ぎて狩りつくされたのだろう。


そんな感じでビンランから文化を学んでいたある日のことだった。

この地に誕生してから初めての嵐が来たのだ。

かなり雨が降り近くの川も氾濫しそうなほど水位が上がっていた。

2日程で嵐は過ぎ去り拠点は特に被害を受けなかった。


「村が心配だ、様子を見に行かんか?ファンタジアン」


確かにこれ程の雨は経験がないので心配になる。

言葉を覚えてからは特に漁村に愛着がわいているので気になってしまう。

ビンランを乗せて漁村に急いで向かう。


漁村に着くとひどい光景が広がっていた。

土砂崩れが起きたらしく村の半分が流されており、

村民たちは復旧に追われていた。


「ビンラン様、ファンタジアン様よくおいでくださいました。」


こちらに気が付いて村長が近づいてくる。

その姿は泥まるけで所々傷ついていた。


「村長よ助けに来たぞ、救助はわしが。」

「わかった、回復と洗浄は任せよ。」


ビンランに救助を任せ、村の中心にため池を作る。

そこで体を洗わせてから回復魔法をかけてやる。

ビンランによって掘り起こされた村民たちもすぐに回復させる。

半日もすれば救助も落ち着き何とか救うことができた。


「ありがとうございます、ビンラン様、ファンタジアン様。」

「私の備蓄している干し肉も後でもってきましょう。」


そういうと村長は喜んで頭を下げてきた。

今は復旧に人手が取られているので少しでも助けが欲しいのだろう。

取りに戻る前に土魔法で土砂を除去する。

大雑把にしかできないので救助には使えなかったが今なら問題ない。


こうして一日救助活動なんかであわただしく過ごした。


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