1.生誕
「うーん、よく寝た」
眠気眼に周りを見回すと真っ暗で何も見えない。
手を伸ばすと土の感触がする。
「埋められてる!」
夢中で手で土をかき分ける。
しばらくかき分けている光が差し込んでくる。
それに喜び一気に掘りぬける。
「出れたーーーーーー!」
出れた嬉しさに思わず叫びながら地面から飛び出る。
周りを見回すと木々のが青々とし近くでは小川が流れていた。
「どこだここ!!」
思わず頭に手をやってから気が付く。
手が黒い鎧のような物を身に着けていて、そんな手が6本生えている。
お腹を見ても同じように身に着けており、
さらに下は足などなく蛇のように長い尾が生えている。
小川に急いで近づき顔を見るとガイコツみたいな顔に目が4つ付いている。
「なんじゃこりゃーーーーー!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しばらく体を触ってみたり動いてみたが
鎧みたいなのに感触があったり、
6本の手を混乱することなく扱えたりしたことから
一様問題なく活動できることを確認した。
「うーん、異世界転生?」
30歳男性転生するという感じなんだろうか?
モンスターだし多分異世界なんだろうな……。
そんな感じで呆然と知っていると森の奥からでかいイノシシが表れた。
いや、イノシシと言ったがなんか違う。
顔の辺りに鎧のような物が付いている。
まじまじと見つめているとすごい勢いで地面を掻き出した。
やばって思ってるうちに突進してくる。
「うわ!やば!」
思わず尻尾ではじくとイノシシが飛んで行って、
樹木に激突して折りながらイノシシは血を噴き出して絶命した。
「うわ……やば……」
自分のやったことながらドン引きする。
いや20㎏はありそうな動物吹っ飛ばす威力で尻尾ビンタってやばいでしょ。
やっちゃったイノシシどうしようと眺めているとお腹が鳴る。
こいつ食べれるのかな……?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とりあえず素人だけどさばいてみた。
爪が鋭いので裂けるかな?とひっかいてみたらできたので
皮をはがして、内臓を取り出し川で肉を洗った。
火起こしどうしよう……。
モンスターみたいな見た目だし火でも吐ければと思い息を吐く。
するとゴオオォォォ!という音と共に火が勢いよくでる。
うーん、モンスター……。
さっき叩き折れた木の枝をもいだり割ったりして
焚火の準備をしイノシシ肉を焼いていく。
良い匂いがしてくると自然と唾がでてくる。
肉を焼きながら少し考える。
火を吐けるなら魔法もあるのでは?と。
試しに水よ出ろ!と念じ手のひらを川に向けると
手から水が出てくる。
「魔法だー!!」
思い通りに魔法が使えてテンションが上がる。
他にも試してみようと手のひらを再び川に向け、
雷や火や氷、風などを次々出す。
これは便利だと思いながら一通り思いつく魔法を使い満足して
焼けたイノシシを食べることにする。
大きかったが一瞬で平らげてしまった。
お腹が膨れて満足したら眠くなってしまった……。
その場でくるまりながら焚火を眺める。
どうしたものか……。
前世のサラリーマンから思わぬジョブチェンジである。
これからどうやって生きていこうか。
人間というか、知的生命体いるんだろうか?
というかこの姿でコミュニケーションとれるんだろうか?
考えていたら眠くなってあくびがでる。
とりあえず寝てから考えよう……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あれから10日ほど小川を拠点に生活をしていた。
イノシシやシカに似た野生動物を狩りながら、
森を探索しているとそれを見つけた。
「な、なべねりこきちすはきでつ」
小さい女の子がおびえながらこちらを見ている。
何を言っているかわからないが、
多分「食べないで」とかそんなことだろう。
膝や手をすりむいておりこけたのだろうか?
どうしたものかと見つめていると泣きながらおもらししてしまった……。
取り合えづ拠点に連れていくことにした。
つまんで連れて行く途中ギャン泣きしてしまったが無視して
小川に来たのでとりあえず、つまんだまま川に漬ける。
汚れは落ちたと思うので焚火跡の近くにおろし、
まだ残ってる炭に火をつけて暖を取らせる。
とりあえず泣き止んだのかびくびくしながら女の子はこちらを見つめている。
まあ、言葉が通じない化け物に洗われて焚火にあてられて怖いだろうな。
回復魔法で傷を治してやり敵意がない意思表示として、
わざとあくびしてくるまって一緒に暖に当たる。
さて、子供がこんなところで一人でいるということは、
コミュニティが案外近くにあるのだろうか?
少女の服装は全身麻の布でできた村人の服っといった感じで、
文化レベルも異世界定番って感じなんだろうか。
そんなことを考えているとお腹が鳴る。
あ、女の子が震えだした……。
仕方ないごはん探してくるか。
起き上がり森の中に食料を取りに行く。
30分程でイノシシもどきが取れたので戻ってみると、
女の子はまだ焚火の前で暖を取っていた。
それを横目にイノシシを解体していく。
火の燃料もなくなるので近くの木をへし折って薪を作る。
焚火に木を追加してイノシシ肉を焼いていく。
すぐにいい匂いがしてくると女の子のお腹が鳴る。
仕方ない、適当な枝に小さく切り分けた肉を刺し一緒に焼く。
小さい方の肉はすぐに焼けたので火から外し女の子に差し出すと、
しばらくこちらと肉を交互に見た後お礼をしながら受け取った。
熱そうに、そして嬉しそうに食べている姿に笑みがこぼれる。
それを眺めながら肉が焼けるのを待つ……。
しばらくの間、肉を食べ終わった女の子と暖炉を囲んでいたが、
お腹いっぱいになったのと温かさからか女の子は寝てしまった。
どうやら落ち着いたらしい。
それを見て安心しながらお肉を食べ始める。
このあたりにコミュニティがあるのであれば。
高い山に行けばどこかに見えるのではないだろうか?
肉を食べ終えたら女の子を連れて山登りをしてみよう。
肉を食べ終わり、眠る女の子をそっと抱え上げて。
近くで高い山に登ってみる。
山頂に登ってみると周りには似たような高さの山があり、
一つだけとびぬけて高い山があった。
山頂に雪は積もっていないのでそこまで寒くはないのかな、
なんて思っていると腕の中で女の子がもぞもぞと動く。
「つごーき
か、よわがかん」
何を言っているかわからないが指をさしている方向に村が見える。
拠点にしている小川の近くだったようだ。
場所さえわかればと女の子を抱えたまま下山し村に向かう。
この体だと何時間もかかりそうな下山も一瞬でついてしまう。
村の近くまで来ると、女の子を探しているのか騒がしい声が聞こえる。
見つかると十中八九めんどくさくなるのでここで女の子を下す。
女の子はこちらを見ると頭を下げて村に帰っていった。
さて、引っ越しするか。