Episode.1-3
剣だ。
死霊が消えた跡に残っていた。
目立った装飾は無い、片刃の直剣。光を反射しない漆黒の剣。
俺は地面に突き刺さるその剣を引き抜く。
……呪われたりしないだろうか。
一瞬戸惑ったがよく考えずに引き抜いてしまった。結果何も起こらなかった訳だが。
剣を空にかざし細部までじっくりと眺める。
柄はまるで俺の為に作られたかのようにピッタリと手に馴染む。柄頭は雫型。鍔は無く、剣身が柄に向かって割れるように少し膨らんでいる。真っ直ぐでやや長めの剣身、切先は尖ってはいるが、あまり鋭くは無い。
ただ斬るために作られた。そう感じられる剣だ。そして目的を追求した武器はかくも美しい。
さっきまで地面に突き刺さっていたが、土埃ひとつ付いていない……それにしても軽い。片手で振れるほどだ。
試しに小枝を斬ってみる。
片手で上段に構え、軽く振り下ろす。
……切れてない。傷もついてない。
ただ斬るために作られた。誰だそんなこと言ったやつ。
いやいや、枝が軽すぎたから、しなるし。もうちょっと太い枝……木、一本いってみるか。
剣を左の脇腹の辺りに右手で楽に持つ。呼吸を整え、一歩踏み込んで一気に振り抜く。
剣は左脇から綺麗な弧を描き、木に弾かれた。右手は振り抜き、剣は弾かれ、手は既に柄から離れてしまっている。
手がジンジンする。木は外皮が少々削れただけで大したダメージは無さそうだ。ズサッと地面に落ちた剣を拾い、剣身を見る。こちらも無傷だ。
斬れそうだが斬れない。斬れないが欠けない。不思議な剣だ。
俺は剣を、そっと影の中にしまった。