Episode.1-1
森。
見上げると木々の葉が朝日を受けて優しく輝いている。木漏れ日を浴びて目を閉じ、風の匂いを感じる。
「ここ、どこだろう」
思わず声に出た。
故郷を旅立って六日目の朝。塔を目指して出発した俺は地図など持たずに、己の勘と魔力探知を頼りに進んできた。
その結果がこれだ。
塔は世界に魔素を振り撒いているらしい。俺たちが魔法を使えるのも塔があるおかげだ……
塔がない時代の人たちは魔法が使えなかったのか.....きっと苦しい生活をしていたことだろう。
まぁ、今の俺ほどじゃ無いだろうけど。
魔素の濃い方へ向かえば塔にたどり着くはず。そう思っていたのだが、あまかったらしい。
この森のように魔素が溜まっている場所があるなんて知らなかった......これは言い訳。
そもそも魔素の濃い薄いなんて、そんなに敏感に感じ取れない。この森にも適当に進んでたら迷い込んでいただけだし。
木々の間を抜ける風が心地好い。
腹も減ってきたし、そろそろ本格的に動かなければならない。俺は辺りを見渡す。
目に映るのは木と、木と、あとは木だけだ。あと地面。少しだが空も見える。見渡す限りの大自然。自然に触れて育ってきた方だとは思うが、こんなに圧倒的な自然に包まれたのは初めてのことだ。
目を閉じ、時間を忘れて森の息吹を感じる。
「やすらぐなぁ」
……
いやいや、やすらいでる場合じゃないって。
「……走るか」