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本能が求める相手

「そういえば、ここ浴室があるっていってたかしら」


「はい、一番高い部屋なので、室内に完備していると聞きました」


「そう?ならバスタブを出さなくても良さそうね」


そう言って、浴室につながる扉を開く。

そこにはバスタブとそこにお湯を注ぐ魔道具が設置されていた。

この世界に、シャワーなんて便利なものは無い。

お湯を出せる魔道具が作れるのなら、シャワーぐらい簡単に作れるだろうと思うのだが、その発想に至る頭が足りないのだ。

とはいえ、久しぶりに髪を洗いたかったので、お湯を降らせる魔術を使って、髪を濡らして洗う。

折角なので、創造魔術でシャンプーとトリートメント、ヘアパックを創り出して、久しぶりに髪の手入れをした。

元々さらさらで枝毛などないが、気分の問題だ。

バスタブに使って一息ついていると、シルビアが乱入してきた。


「レイ様~。ご一緒してもいいですか?」


そんな伺いを立てながらも、彼女は既に真っ裸だ。

仕方ないなとくすくす笑いながら、シルビアと一緒にお湯に浸かった。


「はぁ~…癒されますね。お風呂は天国です…」


肩までお湯に浸かって、リラックスした彼女は、そんな言葉を零す。

本来水場を好むローレライにとって、お風呂は唯一の安らぎなのだろう。

何を思ったか、対面に居た彼女は、私の後ろに回り込んで、ぎゅうっと背後から抱き着いてくる。


「レイ様。好きです、大好きです。でも、女の私じゃ、もう交わることも出来ないんですよね…」


切なげにそう零すシルビアは、何を考えているのだろうか。

昨晩は本来ないはずのモノで私を抱いた彼女だったが、まさか癖にでもなったのか。

心配していると、シルビアの女の子らしい手が、私の胸を揉み始めた。

ぴくんと反応する身体だが、どうやら私はノーマルらしい。

彼女が熱い吐息を零しながら耳を食んでも、乳首を捏ねられても、少しくすぐったく感じるだけで、甘い声は上がらなかった。


「むぅ…。分かってはいましたけど…やっぱり駄目ですか。昨日のレイ様も、他の男に抱かれている時と私と交わっているときは明らかに反応が違いましたもんね…」


悔しそうに呟いて、シルビアが諦めた様に私への愛撫を止めた。

少しほっとしていると、くいっと顔を後ろへ向けられて、唇を塞がれた。

くちゅくちゅと舌を絡めて唾液を交換し、口に溜まった唾液を呑み込むと、シルビアは少し機嫌を治したようだった。


「昨日は口づけする余裕もなかったので。今なら誰にも邪魔されませんし」


そう言いながら、また口づけを落としてくる。

まぁ、口づけで満足できるなら付き合ってあげるか、なんて楽観的に考えて、されるがままになった私は、一時間ほどお風呂に拘束されて、完全に湯あたりした。


「…大丈夫か?」


冷却魔術で身体の熱を冷やしながら、ベッドにぐったり横になる私の元に、ローゼンが近づいてくる。

因みに湯あたりの原因になったシルビアは、お風呂を出た後サクヤにこってり絞られていた。


「ん。もうちょっと冷やせば大丈夫」


「そうか」


無表情に頷いて、ローゼンは私が横になっているベッドに一緒に入って私を抱きしめた。

熱を持った固いものが後ろから抱きしめられた私の腰に当たっている。

それにびくっと反応して、身体を硬直させると、ローゼンは私を安心させるように優しい声を落とした。


「湯あたりが引くまでは何もしない。お前に負担は掛けたくない」


「…熱が引いたら?」


後ろから抱きしめられているから、ローゼンの顔は見えない。

けれど、耳元で囁かれる声は、どことなく苦し気なものだった。


「正直、昨日お前を抱いたことを後悔している」


「…なんで?」


「一度知ったら戻れない程、甘露だったからだ」


そういえば他の神獣達が私の身体を求めるようになったのも、解呪してからだ。

何故かなんて考えていなかったけれど、ローゼンが口にする言葉で漸く理解した。


「…甘露って、どういう意味?」


「そうだな…。本来俺がお前に愛情を抱いても、普通ならお前に受け入れられることなどない。お前は想像主で、俺は召喚獣だ。ただ、他より聖獣になるのが少し早かっただけの、運のいい獣に過ぎない」


「…うん」


「だが、お前に触れて、一つになった時、膨大な神力が俺に流れ込んだ。同時に、抱えていた愛情が、抑えが効かない程増大した。本能的に、お前を求める獣に堕ちた」


「…獣に…?」


「そうだな。分かり易く言うなら…空腹の獣の前に極上の肉を置いたとして。その獣がどれだけ耐えられるか、なんて例えれば分かるか?」


「…えっと。うん。我慢できてるのが凄いね…?」


「ああ。そういうことだ」


漸く熱が抜けて鮮明になってきた頭で考える。

もし、ローゼンが言うように、本能的に私を求める獣に堕ちているのなら。

彼らが命を懸けて契約を結ぶのも、無理のないことかもしれない。

四人纏めて相手が出来るのは淫紋が発動して意識を飛ばすことさえ出来なくなっているときぐらいだ。

特に発情しているわけでもないのに、同時に何人も相手が出来るわけがない。

そもそも、神獣達は皆絶倫なのだ。

私の体力が持つはずが無かった。


「…私の為の契約だったの?」


「正直に言えば半々と言ったところだろう。俺達にだって独占欲ぐらいある。世界で一番大切な人を、一晩ぐらい自分だけのものにしたい」


世界で一番大切な人。

そんな甘い言葉を囁かれて、胸が熱くならないわけがない。

でもそれは、私が彼らのご主人様だからであって、魂の回廊で結ばれていなければそんな風に思うこともないのではないか。

そんな不安が胸に過る。


「それは、私が創造主だから抱く感情なの?」


気付けば、ローゼンに問いかけてしまっていた。


「…違うだろう。召喚獣は忠誠心は植え付けられるが、愛情は知らないだろう?」


「…うん」


「なら、俺達に愛を教えたのは他ならぬお前だ」


「…ローゼンはなんで私を好きになったの?」


「…最初は胃袋を掴まれた、ぐらいの感覚だった。毎日送られてくる食事を食べるのが楽しみになった。その内、お前に会いたいという感情が膨らんだ。お前があいつらに口づけを許すのを見て、触れたいと思った。許されるなら、同じ位置に立ちたいと。今思えば嫉妬だったのだろうが」


すらすらと心の内をさらけ出してくれるローゼンは、他の神獣達とは違って羞恥心というものが少し欠けている気がする。

まぁ、それを聞いている私も体が熱くなって顔を紅潮させているのだが。


「…なら、もし私から送られてくる料理に神力増幅の効果が無かったらどうだった?それでも好きになったと思う?」


「…何を心配しているのかは知らないが、その仮定は無意味だ。俺はお前に産み出された存在で、お前の料理には神力を増幅させる力がある。仮にお前が女神の生まれ変わりでなかったら、俺達を産み出すことさえ出来なかっただろう。奇跡が幾重にも重なって生じた状況が今だ。もし、なんて言葉に意味は無い」


優しく言い聞かせるように耳朶に響く落ち着いた声音。

確かに、彼の言う通り、無意味だ。

もし料理に神力が宿らなかったら、もし女神の生まれ変わりでなったら、もし、違う存在として彼らと出会っていたら。

そんな仮定の話をしても、何の意味も持たない。

私は女神の生まれ変わりで、幻獣や聖獣を使役することが出来、なおかつ色欲魔神(アスモデウス)に淫紋を刻まれて、彼らを頼った。

一度身体を許した相手を、無碍に出来る程冷たい性分もしていないし、彼らにとって唯一無二なのは確かなのだ。

そう、納得して、こくりと頷いた。


「レイ、湯あたりはもう冷めたか?」


「うん、もう平気だよ」


答えると、腕の力が緩んで、くるりと仰向けに転がされる。

ローゼンの緋色の目には、情欲の炎が揺れていた。

労わるような優しい口づけが落ちてくる。

甘い口づけは徐々に深くなり、貪るような激しい物へと変わっていく。

身に着けていたネグリジェは、簡単に取り払われて、三重結界が密室空間を創り出した。


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