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神級アーティファクトの適合者

「では、ロイ様、スキップ試験を始めますので、演習場へどうぞ」


「ああ。分かった」


頷いたローゼンは、演習場へと足を向ける。

私達は観戦なので、試験が一望できる観客席に移動した。

相変わらず、暇な冒険者達が詰めかけている様だ。

中にはどこまでスキップできるか、金を賭けてやり取りしている輩も居る。


ローゼンは空間ボックスから、神槍ナルカミを出していた。

彼が手に持っているだけで、空間が歪むほどの膨大な魔力を発しているそれが、果たしてスキップ試験に必要なのかどうかはさておき。

一度も使っていなかったから、性能テストも兼ねているのだろうと、傍観する。


「では、Fランクの魔獣から!」


審査係のAランク冒険者が、声を張り上げる。

運ばれてきたのはホーンラビットが入れられた檻。

ローゼンは神槍ナルカミを手にしたまま微動だにしない。

檻の扉が開いて、ホーンラビットがローゼンに敵意を剥いた瞬間、神槍が勝手に敵意を察知して、ばりばりっと雷を放出した。

消し炭も残らなかったホーンラビット。

審査役の冒険者がひくっと顔を引きつらせる。


「次はEランクの魔獣です」


檻が運ばれてきて、入り口が開く。

ローゼンを認識したゴブリンが、一歩足を踏み出すと、彼が何をするわけでもなく、ナルカミが勝手に雷を放ち、消し炭に変えた。

どうやら神槍ナルカミは敵意を向ける対象を自動で殲滅する神級アーティファクトの様だ。


「…凄いですね。私の魔剣ティルフィングは魔力を込めれば何でも熔解させますが…主を守るオートキャスティング付きの神級アーティファクトは初めて見ます」


「…そう、よね。普通は主人が意識して使わないと、武器は武器にならないわよね」


「はい。ですが、あの神槍はかなりローゼンを気に入っているようですね」


「武器にも意思があるってこと?」


「はい。ありますよ。特に神級以上のアーティファクトなら、ほぼ必ず意思があります」


それを聞いて、私は空間ボックスに仕舞い込んでいるロッドの事を思い出した。

そういえば暫く使ってあげていない。

意思があるなら、ずっと空間ボックスは可哀想かな。


そんなことを考えている間に、Ⅾランクの魔獣とCランクの魔獣もナルカミが発する雷によって瞬殺され、Bランクの魔獣が現れた。

檻から放たれたジャイアントディア―が、大きな角を振りかざして、ローゼンに向かって突進する。

その時、初めてローゼンが腕を動かした。

といっても、神槍ナルカミの柄を地面にとんとぶつけただけ。

たったそれだけで、神槍ナルカミは狂喜乱舞したかのように、一瞬にして雷雲を作り出し、今までとは比べ物にならない落雷をジャイアントディア―に落とした。

演習場の半分が瓦礫と化し、直撃を受けたジャイアントディア―は炭すら残さず消滅した。


「…流石にこれは、やりすぎね」


「…ええ。神級アーティファクトがまるで忠犬のように懐いていますね」


「…魔力供給もしてねぇのにあの威力か…」


私の言葉にサクヤが感心したように頷き、ミズキは納得がいかなさそうに舌打ちした。


「次は?」


「あの、その…演習場の破損により、試験続行は不可能で…」


ローゼンが冷たい視線を向けると、審査担当の冒険者が泣きそうになりながら震え始める。


「そうか。では直すとしよう」


ローゼンが修復魔術を使って、半壊した演習場を元の姿に戻した。

私達以外の全員がぽかんと口を開けて固まる。


「これで良いか?」


ローゼンが審判に視線を向けると、Aランク冒険者は絶対に敵対してはならないと悟ったらしく、冷や汗を流しながら何度も頷いた。


「で、では次はAランクの魔獣です…!」


マダーグリズリーが入った巨大な檻が、ローゼンの前に運ばれてくる。

檻から解放され、ローゼンに敵意を向けた瞬間、一度雷雲を呼んだナルカミが再び轟音と共に落雷を落とした。

再度、演習場は瓦礫と化し、直撃を受けたマダーグリズリーは塵も残さず消滅し、その周辺の地面はガラス状に変質する。

その地面が、雷がどれほど高温だったかを物語っていた。


「これで終わりか?」


「はい!お疲れさまでした!」


再び瓦礫と化した演習場を一瞥して、ローゼンが指をぱちんと鳴らす。

修復魔術で元の姿に戻った演習場を見て、審査役の冒険者がぱぁっと顔を輝かせた。


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