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上昇する神力量の判明

「そういえば、ご飯食べて上がる神力ってどの程度なの?」


ふと疑問に思って尋ねてみる。

その気になれば、神眼で食前と食後を鑑定すればいいのだけれど、本人たちに聞く方が早い。


「そうですね、一食につき、500程度でしょうか」


サクヤがステータスを確認しながら答えてくれた。


「デザートも?」


「はい、以前確認したときは同程度の上昇がみられました」


「飲み物も?」


「勿論です」


その驚異的な上昇量に、神獣達が率先しておかわりする理由が理解できた。

神力の上昇はすなわち霊格の上昇だ。

霊格が上がれば、究極神獣にランクアップする可能性も高くなる。

シルビアは半ば諦めているようだが、男神獣達にとっては、食べられるだけ食べたいものなのだろう。

一日に三食、毎回三人前食べて上昇する神力が4500。

夕食後のみのデザート二食と毎食の飲み物を含めるなら、合計で7000上昇する。

一週間、おかわりが出来ないエルノアが、一日に2000しか神力上昇が見込めないとなれば、約35000神力に差が付くという計算になる。

うん、納得した。


「上がるのは神力だけ?」


「いえ、神力が上がれば、魔力と神聖力もおのずと上がります」


その返答を聞いて私は小さくため息を吐いた。

つまり、毎食三食食べられる男神獣達と、シルビアの間には絶対的な差が産まれるということ。

エルノアもお仕置きが終われば三食ぐらい食べるだろう。

その差は何をどうやっても埋めようがない。

せめてシルビアが唯一おかわりを欲しがるデザートぐらいは、彼女を優先しようと心に決めたのだった。


取り敢えず私が作る食事が神獣達にとってどれだけ価値があるものなのかは理解した。

このままずっと作り続ければ、私の神力が神獣達に追い越される日もそう遠くない気がする。

自分で作った食べ物で、神力増加の効果は得られないだろうから。


少し悶々としながらも、私達は地上へつながる転移魔方陣の上に乗った。

視界が一瞬にして切り替わり、薄暗い闘技場のような場所から、地上のダンジョンの入り口付近に転移する。

私達の姿を目視した冒険者達が、口を開けて固まり、騒がしいはずのダンジョン前広場はしんと静まり返った。


「ご、獄炎蝶の方々…まさか踏破に成功なさったのですか…?」


ダンジョンの入り口を守護する門番が、おそるおそると言った感じで声を掛けてくる。


「はい。でなければ、こんな場所に転移などしませんよ」


にっこりと穏やかに微笑むサクヤ。

流石に場馴れしている。

出張所の人間が慌てて飛び出していき、冒険者達は騒然となる。


「では、ギルドに報告を…すぐにギルドマスターが来られると思いますので、少しお待ちください」


「いえ、こちらから出向きます。とはいえ、今日はあまり時間がありませんので、明日にでも。では失礼いたします」


そう一方的に話を終わらせて、サクヤが大規模転移魔術を組み上げる。

多分、私の淫紋の発動が今日中に起こるのを危惧して一度屋敷に戻ろうというのだろう。

エルノアが屋敷内の私の幻影を動かして人払いを済ませたのをサクヤが確認してから、私達はミドラー公爵家の私の部屋に転移した。


「レイ様、今日はこれ以上の活動は危険です。いつ発動するか分からない呪いを抱えたままでは、ギルドに報告にも行けませんから」


「ええ。分かってる。ちょっと待ってね」


人払いの幻術と、不可侵結界、防音結界、視覚遮断結界を張って、部屋を隔離した後、私は自分に感覚鈍化のデバフ魔術を二重に掛けた。

淫紋が浮いてからでは、魔術発動は出来ないので、今のうちに掛けておく。

今から十時間ほど持続すれば問題ない。


「何掛けたんだ?」


眉を寄せるミズキは、私が掛けた魔術の性質ぐらいは読み取れたのだろう。


「感覚鈍化。淫紋で上がる感度がどの程度か分からないから、一応二重にしておいた」


「…あぁ。そうだな。そのぐらいしないと多分持たねぇな」


納得したようにミズキが頷いた。

相手に好意を持っているだけで、与えられる感覚はかなり鋭敏になる。

初めて知ったことだが、気持ちが繋がっている相手とそうでない相手では、与えられる快感がまるで違う。

今ここにいる神獣達は、全員私に好意を持っていて、感情感応で私にも同じように感情が芽生えている。

なんなら感覚遮断の魔術もあるが、それを掛けてしまうと、多分神獣達も解呪に手間取る。

鈍くなるのと、全く反応しないのとでは意味が違い過ぎるからだ。


「で、呪いとはなんだ?」


今まで話について行けなかったローゼンが口を開いた。


「あー…前のダンジョンの最下層で色欲魔神(アスモデウス)にレイが植え付けられた呪いだ。淫紋…一週間に一度発情し、100回絶頂するか、10回射精されるまで一時解呪もままならねぇ厄介な…な」


内容を聞いて、ローゼンが顔色を変えた。

緋色の瞳に殺意が宿り、怒りをあらわにしている。


「神獣になっていたお前たちでもレイを守れなかったのか?」


「…守るどころか気配すら感じなかったんだよ。色欲魔神(アスモデウス)は地上界に存在する、神をも超える化け物だ。七大悪神の一柱だぞ。神獣程度でどうにかできる相手じゃねぇよ」


ミズキはローゼンの殺気を受け流しながら、面倒くさそうに頭を掻いた。


「本体が出てきていないということは、まだ封じられているはずだろう。そんなものがなぜレイを狙う」


「ああ、お前は知らねぇんだったな。レイは元女神だ。アフロディーテの転生体なんだよ。大方、魔神と神界の連中が手を組んだんじゃねぇのか」


それを聞いたローゼンが、妙に納得したような顔になった。

まぁ、唯の魔族が作った料理が神力を上げるわけがない。

色々と分からなかった謎が一気に解けたのだろう。


「…その呪いの目的は?」


「…レイが性欲に溺れ、肉欲に支配された瞬間、神格が剥奪される」


「………」


ローゼンは難しそうな顔をして押し黙った。

私が感覚鈍化などという、高階梯の魔術を使った理由が分かったのだろう。



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