ローゼンの合流
―レイ様、そろそろお昼でしょうか。
サクヤの念話にはっと我に返って、空を見上げる。
ダンジョン内の疑似太陽は中天に差し掛かっていた。
「うん、適当に降りてくれる?」
―はい。わかりました。
サクヤが範囲指定してから森を焼き払い、地面に降りる。
因みに森を焼き払っているのはブレスではなく範囲指定の炎魔術だ。
障害物の無くなった場所にマジックコンロを設置して、何を作ろうか考える。
あ、オムライスとかいいかもしれない。
早速ご飯を炊いて、タマネギを薄切りにし、マッシュルームも薄切りにして、しめじをほぐす。
中火で熱したフライパンに、マッシュルームを入れ、バターと共に炒める。
追加でごはんとコンソメを入れて炒め合わせ、火から下ろす。
お皿にバターライスを盛りつけて、卵を半熟に焼いて、バターライスの上に乗せる。
フライパンに、タマネギ、しめじ、ケチャップ、中濃ソース、しょうゆ、砂糖、水を入れて中火でひと煮立ちさせたら、デミグラスソースの完成。
半熟卵の上にソースを掛けて、できあがり。
「はい、できたよ」
スプーンと一緒に手渡すと、神獣達は興味津々で食べ始める。
「旨いな。そういや、エルノアの罰は何にしたんだ?」
オムライスを口に運びながら、ミズキが私に視線を向ける。
「1週間、ロイヤルミルクティーとおかわり禁止」
答えると、ミズキがくつくつと笑い始める。
「神力を増幅させる料理のおかわり禁止か。甘ぇが、なかなかいい案じゃねぇか」
「そうですね。エルノアがおかわりできないというなら、私達の神力を高めるチャンスでもありますし」
「レイ、これから俺の分三人前作れ」
「私も三人前是非お願いします」
ここぞとばかりに、エルノアを突き放しに掛かる、ミズキとサクヤ。
レベルが足りない分、神力で補おうというのだろうか。
ぐうの音も出ないエルノアは少し焦った様子を見せている。
「良いけど。ローゼンはどうするかな」
「あ?あいつか。念話繋げてみりゃいいじゃねぇか」
「そだね」
頷いた私は久々にローゼンと念話を繋げた。
―ローゼン。聞こえる?
―はい、なんでしょう。
―エルノアが問題を起こして罰としておかわり禁止にしたの。ローゼンは、ご飯もっと欲しい?
―はい!頂けるのなら食べたいです。それに、こちらの状況も少し落ち着きそうですし、近いうちに合流してもいいですか?
―ん?騎士団には入団したのよね?状況が落ち着いたってどういうこと?
―一応、七番隊の副隊長への昇進は出来ました。ですが、年齢が14なので、肉体は未だ発展途上です。レベルの差で力負けすることはありませんが、成人しなければこれ以上の昇進は目に付きすぎるかと。
―ああ、成程ね。確かに14歳で騎士団長は無理があるよね。最年少でも16歳ぐらいのほうがいいかも。
―はい。騎士の鍛錬と言っても、俺には全く意味のあるものではありませんし。エルノアの幻魔術で、幻影に訓練しているよう見せるだけで問題ないかと考えていました。
―分かったわ。なら貴方がこっちに来れるように、エルノアに幻影を作らせましょう。とはいえ、こっちに来たって、ダンジョンに潜ってるだけよ?
―ご主人様と一緒なら何をしていても楽しいに決まっています!
―そっか。ならすぐ手配するわね。
―はい!ありがとうございます!
嬉々とした声の後、念話が切れる。
「ローゼン、こっちに合流するつもりみたい」
今会話した情報を口にすると、ミズキが舌打ちした。
「…っち。面倒だな」
「…それって俺が幻魔術で抜け出せるように手を打てってこと?」
「うん。お願いできる?」
エルノアを見ると、早速ローゼンの位置を探知し、不自然にならないように幻魔術を使った様だ。
神獣にもなれば、どれほど距離があろうと、正確な位置に魔術を展開できる。
七十階梯の幻魔術にもなれば、肉体を持たせることも十分可能だ。
触れられなくて幻影だと見破られる可能性もなくなる。
私にも勿論できるけど、彼らは私には頼まない。
「ん、出来た」
―あ、ローゼン?幻影は送りこめたみたいだから、こっち来ていいよ。
―もう終わったんですか?流石エルノアですね。ではすぐ行きます!
念話が切れたと思ったら、転移魔術でローゼンが転移してきた。
年齢操作しているので、14歳の姿のままだ。
「早かったね。あ、ローゼン、肉体の年齢、普通に戻していいよ」
「はい。わかりました」
年齢操作を解除したローゼンは、あっという間に美少年から美青年に変化する。
「丁度食事中だったんですね。俺も食べたいです」
「うん、作ってあるから、座ってて」
「はい」
大人しく地面に座るローゼンに、オムライスを手渡す。
一口食べると、幸せそうに顔を緩めるローゼン。
エルノアも基本にこにこしているけど、性根は結構黒い。




