媚薬の返品
あの後、さっさと服を着たエルノアは、瞬間移動で消えていった。
あの手の物がちゃんと返品できるのかは分からないが、まぁ、反省した彼ならなんとかするだろう。
朝ごはんを作るためにマジックコンロの前に立った私は、何を作ろうか思案する。
うん、ピザトーストにしよう。
食パンを創造魔術で創りだし、ケチャップを塗って、タマネギ、ピーマン、ハムを切り、パンの上に乗せて、ピザ用チーズをたっぷり乗せる。
オーブンでさくっと焼き上げれば、超簡単な朝食の完成だ。
パンだけじゃ足りないかな。
まぁいいか。
「はい、どうぞ」
だんだんと雑になっていく朝食は、それでも食べたことのないもので興味をそそられるサクヤとミズキ。
エルノアは多分すぐに帰ってくるだろうから、残しておいて。
ローゼンとシルビアには転送魔術で送り付けておく。
「不思議な味わいですね。これは何という料理なのですか?」
一口頬張ったサクヤが、興味本位で問いかけてくる。
ミズキはあまり気にならないらしく、むしゃむしゃと食べ進めている。
「ピザトーストっていうの。ピザっていうのは、本来は薄い生地の上に色んな具材を乗せた料理の事ね」
「成程。ということは乗せるものによって味が変わるタイプの料理なんですね」
頷きながら、サクサクとトーストを食べるサクヤ。
「おかわり」
ミズキはあっという間に食べ終わったらしい。
まぁ、食パン一枚だし、当たり前か。
「何枚食べる?」
「二枚くれ」
「はいはい」
焼いてあったピザトーストを重ねて二枚差し出す。
ミズキはまた黙り込んだまま、もくもくと食べ始めた。
「私もおかわりいただけますか?」
一枚目を食べ終わったサクヤが、お皿を手渡してくる。
「何枚欲しい?」
「二枚欲しいです」
「ちょっと待ってね」
流石にいつも一回しかおかわりしない彼らが食パンを三枚食べるとは思ってなかったので、ちゃちゃっと追加で作る。
うん、やっぱりパン一枚は成人男性にとっては少ないよね。
いつもは大皿に多めに持っているから余計に。
おかわりのピザトーストを渡すと、嬉しそうにまた口に運び始めるサクヤ。
彼は割と食に勤勉だ。
好奇心も強いし、感想も言う。
作りがいのある神獣である。
ミズキも何を出してもおかわりはするし、食べ方から大体の心情は読み取れるけど。
いつも不機嫌そうな顔をしているミズキの表情は、何か食べているときは少し変わる。
美味しいと感じたものを食べているときは微妙に唇が緩むし、顔つきも穏やかになる。
ピザトーストは、別に好みではないが、食ってはやる。みたいな感じだろうか。
やっぱり肉料理を出した時よりは反応が悪い。
「レイ、ただいま」
追跡瞬間移動で戻ってきたエルノアが、褒めてとでも言いたげに私に抱き着いた。
「ちゃんと返してきた?」
「うん。渋られたけど、嫌われそうになったっていったら返金してくれた」
「そう。お金はまぁどっちでもいいんだけどね。あれが処分さえできれば」
そう言いながら、エルノアにピザトーストを渡す。
お仕置き中なので一枚だけだけど。
ぱくりと齧りついたエルノアは、美味しそうに顔を緩めた。
好きなのはチーズかな。
そう思いながら、皆の分の飲み物をコップに注ぐ。
ミズキはコーラ、サクヤはコーヒー、エルノアはミルクティー。
そういえばローゼンは飲み物とかどうしてるんだろうか。
結構味の濃いもの送ってる気がするけど…まぁ神獣だから大丈夫かと思いなおし、シルビアにはオレンジジュースを送っておく。
水すら必要ない神獣の体って便利ではあるけど、かなり不思議だ。
どうなってるのか調べてみたいが、流石に私も、自分が作り出した召喚獣達を解剖しようなんて思えず、思考を切り替えることにした。
マジックコンロを収納し、ベッドも空間ボックスに仕舞って、洗浄魔術で片づけを終える。
今日はサクヤが飛んでくれるのだろう。
擬人化を解いた鳳凰の神々しさは何度見ても圧巻だった。
翼は黄色、緑、赤へのグラデーションで、尾羽は七色に煌めいている。
ミズキの龍の姿は、神々しさよりも威圧感のほうが大きい。
その点サクヤの鳳凰の姿なら、そこらを飛んでいても、崇められる程度で済みそうだ。
新しい信仰になりそうなのは怖いけど。
背中に乗ると、いつも通り風圧を通さない結界を張って、サクヤが亜音速で飛び始めた。
完全に風を通さないサクヤの背中は、飛行機に乗っている感覚に近しい物だろう。
空の旅は快適だ。
とはいえ、暇なことは事実。
神獣達は私が寝ている間絶対暇なんだろうし、何か暇つぶしの道具とかないかな。
そう考え、思いついた娯楽品をぽんぽんと創造魔術で創っていく。
チェス盤、将棋盤、囲碁盤、トランプ。
サクヤの背中は殆ど揺れることもなく、超快適なので、こんなゲームで遊ぶこともできる。




