特別な飲み物
翌朝。
来なくてもいいと思っていても、朝は来る。
ミズキの抱き枕になっていたので、起こして腕から脱出する。
ミズキは私に合わせて、わざわざ意識を落としていたらしい。
まぁ、昨日の行為で疲れていたのかもしれないけれど。
まぁ…時間停止魔術ぐらいは難なく使えるのだけれど、停止したって永遠に時間が止まるわけでもなければ、停止した時間軸でも動けるものは動ける。
真なる神獣に目覚めた三人なら難なく動けるだろうから、停止したって意味がない。
という訳で、ベッドから降りた私は、ブーツを履いて地面に降り立った。
雑草は深く生い茂っているが、まぁ足を取られるほどでもない。
森の中に入り込んでしまえば、炎魔術で森を焼き払わない限り着陸さえ出来ないだろうけれど。
取り敢えず、朝ごはんを作ろうとマジックコンロの前に立ち、食パンとブルーベリージャムを創り出す。
食パンをオーブンで焼き、バターとブルーベリージャムを塗る。
簡単に目玉焼きとウインナーをフライパンで焼いて、目玉焼きには醤油をかけ、お皿に乗せる。
「はい、朝は簡単なので許してね」
私が朝一から重いものは作らないと分かっている神獣達は、それでも、ジャムを塗った食パンに興味津々な様子だった。
そういえばジャムは初めてだっけ。
そんなことを思いながら、食パンを齧る。
ブルーベリーの甘酸っぱさが口に広がって、ほどけていく。
飲み物、欲しいな。
そう思い、紅茶を淹れ、コーラとミルクティーを取り出して、コーヒーはドリップタイプの物にお湯を注ぐ。
それぞれ好きな飲み物を渡してやると、それぞれ嬉しそうに受け取った。
ミズキは勢いよくコーラを飲み干して空にするし、エルノアはパンとミルクティーが合うことに気付いたのか、食べながら少しずつ飲んでいる。
サクヤもまったり食パンを食べながら、コーヒーの匂いを嗅いで、少し違うことに気付いた様だ。
「とてもいい香りですね。このコーヒー前のとは違うのですか?」
「うん、ドリップで淹れると香りが良いの。味も多分違うと思う」
「どりっぷ、というのは分かりませんが、本当ですね。前に頂いたものより味に深みがあります」
砂糖もミルクも入れずにブラックでコーヒーを嗜むサクヤは大人舌だなぁなんて思う。
私も紅茶には何も入れない派だけど、コーヒーには砂糖とミルクは欲しい。
「ねぇ。なんでサクヤのだけ特別なの?ミルクティーはもっと美味しくならないわけ?」
サクヤだけ特別というのが気に食わなかったのだろう。
エルノアは不機嫌そうにこちらを見つめる。
「うーん、ロイヤルミルクティーを作ることは出来るけど」
「ふぅん?じゃあ作って?」
邪気のないエルノアは無邪気で素直だ。
最初は気にも留めなかった某メーカーの味も、特別があるのなら欲しいというのだろう。
まぁ、そんなに手間でもないし。
鍋に牛乳を入れて沸騰させ、茶葉を入れて少し蒸らす。
砂糖と生クリームを入れて味付けすればロイヤルミルクティーは簡単に出来る。
「はい、どうぞ」
紅茶の入ったカップを手渡すと、香りを嗅いで少し驚いたように目を開く。
一口飲んで、ぱぁっと綺麗な緑の瞳が輝いた。
「凄い、美味しい。毎日飲みたい」
「はいはい。簡単だから、作ってあげる」
そう言って撫でようとすると、エルノアはむっと口をへの字に曲げて、私から距離を取る。
うーん…撫でられるのは嫌いなのかな。
子ども扱いだとか思われてる?
まぁいっか。
いつも通り三人ともおかわりして、食べ終わった食器は洗浄魔術で洗ってしまった。
これが癖になると、シルビアが仕事が無いって泣きそうだな…なんて思いながら、マジックコンロとベッドを収納して、立ち上がる。




