ラーメンを作ってみた
食休みが終わって、シルビアが食器を洗ってくれる。
デザートまで作ったので、調理器具の食器の量が多い。
洗浄魔術を使って手伝ってやって、マジックコンロを収納する。
シルビアはまた擬人化を解いて海に潜り、私達は今度はミズキの背に乗って氷の大地を飛び立った。
時速100キロ程に速度を落として五時間飛び、ボスに近づいたところで、一旦切り上げる。
空を飛んでいるので、モンスターとの戦闘は無い。
シルビアは戦いながら海の中を移動しているだろう。
再度氷魔術で深海まで凍らせて、足場を作る。
夕飯は何にしようかと考えて、ラーメンを作ろうと思い立った。
早速麺を打ち始める。
生麵を創造しても良かったが、まぁ少しの手間ぐらい惜しくはない。
時間加速で寝かせる時間をすっ飛ばし、生地が出来上がったら、パスタマシーンに入れて麺を切る。
その間に、チャーシューを仕立てていくことにした。
ワイルドボアの肩肉を使って、タコ糸で巻いて固定する。
肉に塩胡椒で下味をつけて、一時間寝かせる時間を時間魔術で飛ばし、フライパンで焼き色を付ける。
沸騰したお湯に豚肉を入れて、一時間の煮込み時間を時間加速魔術で短縮し、キッチンペーパーで水気を拭きとる。
醤油、酒、青ネギ、ニンニク、ショウガ、八角、唐辛子。はちみつを混ぜ合わせたつけダレに沈め、二時間分時間を飛ばすと、フライパンに戻し、つけダレを絡めながら煮立てる。
全体に照りが出たら、仕上げに塩胡椒を振って、チャーシューの出来上がり。
そこからラーメンの肝ともいえるスープを作る工程に移る。
ゲンコツの下処理を時間加速魔術を使ってちゃちゃっと済ませ、香味野菜にキャベツの芯とニンジン、タマネギ、りんごを加え、水を入れて、沸騰させ、二時間程時間をすっ飛ばす。
野菜くずを取り出して、お玉で肉の骨や肉片を潰し、30分ほど時間を飛ばしてスープが白濁するまで煮込む。
骨を取り除き、ざるで漉したら、豚骨スープの出来上がり。
既にスープになっている地球の市販品を創造することも出来たが、まぁ、何事も経験だ。
知識だけはあるので、作業は苦ではない。
ラーメンの麺を沸騰したお湯で茹でて、ざるで水を切り、どんぶりにスープを入れて、麺を入れる。仕上げに薄く切ったチャーシューを添えれば、自家製豚骨ラーメンの出来上がり。
でも、まぁ地球に住んでいる人間たちは、こんな時間のかかる料理を時間加速魔術無しでよく作っているものだな、なんて思いつつ、香りに釣られたのか、既に集まってきていた神獣達に、ラーメンをお披露目する。
「わぁ…美味しそうです…」
シルビアが感嘆の声を上げ、他の神獣達も初めて見る料理に目が釘付けだ。
「はい、食べてみて」
ずるるっと麺を啜ったサクヤが、幸せそうに息を漏らす。
「今日は一段と手の込んだ料理ですね。とても美味しいです」
「は…肉が溶ける…やべぇ」
「はぁ…レイ、俺らを殺す気なの?こんなの食べたら、もうレイの料理なしじゃ生きてけないよ」
エルノアが皮肉気に呟きながらラーメンを啜っている。
うん、そこまで考えてはいなかった。
食欲のない神獣達でも流石にこれまでの美食の嵐で胃袋を掴まれたのだろう。
これ、一般人に振舞ったら不味いレベルの料理なんだな、なんて納得しながら、ラーメンを啜る。
まぁ、学園生活が始まれば、こんな料理を作ることも減るかもしれないけど、その時はその時だ。
学校って一回通ってみたかったんだよね。
その為にローゼンを王都に逗留させているわけだし。
因みにローゼンには以前から経験値共有化は有効化にしておくように伝えてある。
一人ダンジョンに潜れず、置いてきぼりにしないための処置だった。
今は剣術の稽古に励んでいることだろう。
「おかわり」
「私もください」
「俺も」
ミズキ、サクヤ、エルノアは当然のように一人前ぺろりと平らげ、スープまで空になったどんぶりを差し出した。
苦笑しながら、おかわり分の麺を茹でてやる。
チャーシューを使い切ろうと残っていた分を全部乗せてやると、目を輝かせた神獣達が、とろとろに煮込まれた豚肉に齧りついた。
勿論ローゼンの分は既に転送魔術で送ってある。
おかわりの分も含めて。
「はぁ~幸せですぅ…」
ほぅっと幸福そうに息を吐いたシルビアも、スープまで全部飲み切ったようだった。
後片付けをシルビアに任せ、私は一足先にバスタブを取り出した。
丁度いい温度のお湯を張り、服を脱ぐと、いつの間にか側にいたサクヤが、同じように服を脱いで、お湯に浸かり始めた。
不可侵結界と視覚遮断結界、防音結界の三重結界で密室空間は既に構築されてある。
「え?サクヤ?何してるの?」
綺麗に割れた腹筋も、胸板も、目に眩しい。
視線を逸らしつつ、お湯に浸かるといつの間にか背後に移動していたサクヤにふわりと抱きしめられて、腕の中に閉じ込められた。
あのサクヤが?
理性の塊みたいな人だったのに。
私の戸惑いを他所に、サクヤは私の唇を塞いだ。




