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神獣の悪だくみ

露店の料理はたいして美味しくないと学習したため、今度は貴族でも入りそうな、少し高級なレストランに足を運んだ。

王都ではないので、そこまで期待はしていないが、牛肉の赤ワイン煮があったのでそれを注文する。

貴族社会では、高価な調味料もふんだんに使われている。

秘蔵のたれだったり、コンソメキューブの代わりに野菜や肉から旨味を取り出したりと、時間をかけて工夫するのだ。

折角一緒に店に入ったのに何も注文しないと不自然なので、サクヤとシルビアもそれぞれ一品ずつ注文する。

運ばれてきた料理は、公爵邸で食べなれた、膨大な時間をかけて出来るだけ美味しく調理されたのだろう努力が窺い知れる味だった。

うん、まぁそうだよね。

科学技術と食に対する欲求が高まりに高まった地球の調味料と比較するのは可哀想だ。

この世界の一般人は、殆ど塩味のみで生活しているのだ。

この料理に文句は言うまい。


「…レイ様が簡単そうに作る料理の方が断然美味しいですね」


「ですね。でも料理人さんが頑張ってるんだろうなってことは分かります」


シルビアは、下手をすれば半日かけて煮込まれる肉料理に対して、努力を読み取ったらしい。

流石だ。成長している。


「まぁ…冒険者ギルドで何も食べないわけにもいかず、仕方なく注文した料理よりはずっとましですね」


「そうですよね。あれは、食べるのが面倒になるぐらい薄味でしたし」


そんな感想を並べながら、もくもくと食事を続ける。

一応作った人への礼儀は弁えているのか、二人ともちゃんと完食した。

おかわりはしなかったけれど。


因みに、エルノアとミズキは別行動中だ。

何をしているのかは私も知らない。



その頃、エルノアとミズキは、魔法薬を扱っている店舗を転々としていた。


「何探してんだ?」


「んー?秘密」


ミズキの質問をはぐらかしながら、エルノアが古びた店の入り口を潜る。

そこで見つけた目的の物に、エルノアは目を輝かせた。


「店主、これ何本在庫ある?」


「ああ?お前みたいなのがこんな薬に何の用でい」


店主はエルノアの綺麗に整った顔を見て、眉根を寄せる。

それはそうだろう。

本来ならこんなものを使わなくとも女なら吐いて捨てるほど寄ってくるような顔をした男が、欲しがる代物とは思えなかったのだ。


「いいから。何本あるの?効き目は?効果時間は?」


「あー…今あるのは10本程度だ。欲しいならいくらでも作ってやるよ。状態異常に耐性のねぇ奴なら、一本で3時間は効果がある。だがうちのは結構きついぞ。飲ますなら三日に一本にしとけ。掛けるだけなら一日一本でも問題ないだろう」


「分かった。味は?」


「無味無臭だ。盛りやすいようにな」


それを聞いてエルノアがにやりと腹黒そうな笑みを浮かべる。

店主は、盛られる人間のことを想像して、冷や汗を流した。


「へぇ。いくら?」


「一本金貨十枚だ」


「ふぅん。じゃあ十本全部頂戴」


「おう、くれぐれも薬漬けにはするんじゃねぇぞ。これなしじゃ生きていけなくなるからな」


「はいはい」


そう言って、エルノアは共用ボックスから白金貨を一枚取り出す。


「お代はこれでいいよね?」


「白金貨だと?お前どこのぼんぼんだ?」


「今はただの冒険者。じゃ、十本貰ってくから」


さっさと支払いを終えて、薬の瓶を10本全て個人の空間ボックスに放り込む。

間違っても共用ボックスに放り込んでいけない物だ。


一連のやり取りを店の入り口から眺めていたミズキが、エルノアに声を掛ける。


「お前、性格悪すぎないか?」


「へぇ?ミズキは興味ないの?」


「いや?半分よこせ」


「良いけど、サクヤには内緒ね」


「ああ」


エルノアから五本分の薬瓶を受け取ったミズキは自分専用の空間ボックスにそれを仕舞い込んだ。



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