少し大きなお買い物
商人ギルドを出ると、サクヤが私を振り返った。
「レイ様。すぐに次のダンジョンへ?」
「うん。今で4つ目よね?まだ潜ってないダンジョンは、残り12か所?」
「はい。比較的探索が容易なダンジョンから進めていましたが、レイ様とエルノアが合流したことで、難易度は格段に下がります。正直、どこのダンジョンから巡っても問題はないかと」
「そう、なら任せるわ」
「はい、承りました」
そう言って、サクヤは商人ギルドの裏手に回り、人目のつかない裏路地に移動する。
「では、妖精の国のギリネウへ向かいましょう」
「ええ」
サクヤの展開した大規模転移魔術で私達はあっという間に竜人の国から姿を消した。
サクヤの転移魔術で移動した先は、妖精の国内のダンジョン都市、ギリネウ。
ハイトロネアと同じくダンジョンのドロップ品を特産とする街で、獄炎蝶としてまだ踏破していないダンジョンが解放されている街でもある。
―そういえば幻獣達が狩った魔獣の肉をこっちに流してもらうことって出来ないのかな。
折角各国に散らばって魔獣を間引いているのだ。
倒した魔獣を食べるわけでもなく放置するなら、肉だけでも還元できない物かと考える。
―そうですね、一部の幻獣は擬人化と人語理解はあるでしょうから、彼らに頼んで冒険者ギルドで解体してもらうことは可能ではないでしょうか。
サクヤの返答に、私は繋がっている魂の回廊を通じて全幻獣に命令を出した。
魔獣の肉を、還元せよ。但し、森に入ってくる冒険者達の狩場を潰さない程度に。
そんな想像主からの命令を受けて、幻獣達は大張り切りで魔獣を狩り始める。
肉の美味しい魔獣を獲物に定め、縄張りだけを守っていた幻獣達が動き出す。
より能動的に、主人に肉を捧げるために。
これにより、今まで幻獣が倒した死体から、肉や牙などの討伐部位をかすめ取っていた悪辣な冒険者達は免許剥奪に追い込まれることになる。
幻獣が、肉を求めるようになり、冒険者ギルドに直接引き渡すようになったのだから当たり前だ。
肉以外の部位は金貨に変わって、全幻獣に開放している空間ボックスに貯蓄されるようになり、容量制限のない空間ボックスは肉と金貨が毎日納品される窓口となった。
幻獣達に肉を届けろとは言ったものの…一応今少なくなってるものは買い足しておこうかと、肉屋、魚屋、八百屋と回って、足りない食材を買い足す。
ついでにマジックアイテム店に入り、マジックコンロよりも優れた調理器具が置いてないか探してみる。
何店舗か回ると、オーブン付きのキッチン型マジックコンロが目に入った。
「これは?」
私が指さしたマジックコンロを見て、店員がものすごい営業スマイルを浮かべて商品説明をしてくれる。
「おやお客様お目が高い。こちらは料理のサポートをしてくれるマジックアイテムでして、下がオーブン、上が三口のコンロとなっております。
上の台で調理ができますし、オーブンを使えば料理の幅が広がること間違いなしでしょう。さらに、コンロの下にはグリル昨日も搭載しております。このマジックコンロ一つでどんなお料理でも実現します」
うん、こういうのを探していた。
私が創造魔術で創ってしまうと、異世界キッチン感満載の地球でよく見かけるキッチンが出来てしまう可能性が高い。
その点これなら、他の冒険者や人目についても、高い調理器具を使っているんだな程度の認識で済む。
「いくらですか?」
「はい、こちら金貨980枚となっております」
約千枚。キッチン一つならまぁこんなものだろう。
「サクヤ、買っていい?」
「勿論好きなだけお使いください」
その言葉を聞いて、共用の空間ボックスを開いて、皮袋に入っている白金貨の袋を取り出して、白金貨9枚と大金貨8枚を店員に手渡す。
「え…えっと…はい、すぐに数えさせていただきます!」
漸く状況を理解したのかそもそも売れると思っていなかったのか、渡された袋を見て動揺し、頭を振って切り替えて、見たこともなかったのかまじまじと白金貨を眺める店員。
自分ではそれが白金貨だという確信が持てなかったのだろう。
店員は一度頭を下げて店の奥へと消えていった。
暫くして、店主を連れてきた店員が、何度も頭を下げる。
「それでいい?」
「はい、どこへ運びますか?ご自宅で?」
「ううん、空間ボックスが使えるからこの場で貰っていくわ」
そう告げて、大型マジックコンロに手を翳すと、空間魔術が発動し、マジックコンロが空間ボックスへ収納される。
「おお…」
初めて見た空間魔術に目を輝かせる店員と店主。
「ありがとうございました!」
そんな感謝の言葉を背中に受けつつ、私はサクヤとシルビアを連れて歩き出した。




