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踏破報告

「そういえば、前のダンジョンのドロップ品売れるよね?」


「はい、踏破したことは…この際ですから伏せずに行きましょう。となると、一度ハイトロネアに戻った方が良さそうですね」


「そうなの?踏破報告するのなら、ダンジョン都市のハイトロネアのギルド支部でまず報告を上げなければなりません。まぁ、あの街のダンジョンが今後踏破されることはないでしょうが、把握した構造や、出現モンスターの報告などが義務付けられていますし」


そう告げて、ギルド内で堂々と空間移動魔術を展開するサクヤ。


「いいの?こんな目立つ魔術、ギルドに知られて」


「問題ありません。こんなこともあろうかと、魔術特性を空間属性に指定しています」


それでも冒険者達が騒然とする中、私達は一度竜人国のダンジョン都市、ハイトロネリアに戻った。

ギルドの真ん前に転移したサクヤは、ギルド支部の扉を開けて、受付に金色の板を渡す。

それを見た瞬間、慌てて立ち上がった受付嬢は、走り去っていった。


その光景を見て、少し前に読んだ文献の内容を思い出す。

ダンジョンは作られた時に必ず、最奥に踏破証明書となる物が仕舞われている。

それは、ダンジョンを創り出す能力を持った古代神が残した、遺物なのだ。

何万年も昔、この世界は古代文明が栄えていた。

古代文明は地球と同程度のレベルまで科学技術が発達し、魔法文明が盛んな世界だったという。

残念ながら私は神の中でも若い方だった為、古代文明を直接見た記憶はないが、文献に綴られていたのは、私でも心躍る様な先進的な世界だった。

その当時の地上人達は、殆どが迷宮に潜れるほどの実力を持ち、一つの塔を建築した。

その塔こそが、神獄の塔と呼ばれる、最難関の迷宮で、その塔を登りきったものには、一人につき一つ、願いが叶えられるという。

これは神が叶えてくれる願いではなく、古代文明の神話級魔術が、人の願いに感応するんだそうだ。

その塔を登り切れば、神にさえなれる。

しかし、難易度は迷宮の更に上。

それこそ究極神獣レベルの力を持つ者だけが、踏破出来るという伝説級の塔。

その塔は、未だこの世界に存在している。

神話級魔術で保存魔術が掛けられているため風化も劣化もせず、今も天を貫くような巨大な塔が大陸の中央に鎮座しているという。

まぁ…迷宮にも潜っていない私達が今どうこう言う話ではないけれど。


そんなことを思い返していると、このギルドの最高責任者、ギルドマスターが姿を現し、私達は最上階の応接室に通された。


「いやはや、Sランクパーティ、獄炎蝶の噂は耳にしておりましたが、まさか、我が街のダンジョンまで踏破してくださるとは。私はハイトロネアのギルド支部のギルドマスターを務めさせていただいております、ガグルムという者です。それで、二十六階層より下は、どんな様子でしたかな?出来れば詳しくお聞かせ願いたいのですが…」


若いころは高ランクの冒険者だったのだろう、今でもそれなりの実力が伺える老人が、丁寧な口調でサクヤに話しかける。


「はい。まず…」


サクヤは二十六階層の密林の広さとボスモンスターの特徴を正確に伝えていく。

二十七階層は砂漠、二十八階層は広大な草原。

草原の広さは、ボスに一直線に向かった上で約一万キロ程。

方向を間違えば約四万キロの広大な空間で、数年たっても出られないであろうこと。

全て真実を話した。

最下層の色欲魔神(アスモデウス)に関することは伏せて、触手の魔物とだけ説明する。

途中で香り高い紅茶が運ばれてきて、お茶うけにクッキーが出された。


「なんと。そんな階層が…。して、貴方方はその階層をどのようにして踏破なさったのですか?」


サクヤがどうこたえるか迷ったので、私が代わりに口を開く。


「私が召喚士なんです。密林も砂漠も草原も、飛竜を召喚して空を飛びました」


これが一番無難な答えだ。

証明して見せろと言われれば、幻獣を召喚して見せれば済むのだから、嘘は言っていない。

ミズキとサクヤの正体を隠しているだけだ。


「成程。さようですか。それでは、一般の冒険者がこのダンジョンを踏破するのは難しいでしょうなぁ。ダンジョンのドロップ品はお持ちですかな?」


「はい。ボスの物だけ出しましょうか?」


「はい、是非とも」


ダンジョンのボスが、形を残さず消滅しても、ドロップ品を出してくれる仕様で本当に良かったと心から思う。

もし相手が魔獣だったなら、骨も残さずぐずぐずに溶けたジャイアントスコーピオンや、消し炭になったミルメコレオをどうやって討伐したのか、説明に困るところだった。



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