冒険者登録しよう
「さてと。今日は冒険者ギルドに登録に行こっか」
そう告げると、神獣達が目を瞬かせる。
なぜ今になって?
と思っているに違いない。
二度寝していたミズキも漸く起きだして、自分の服に袖を通し始める。
まぁ、ギルドに登録するのは、昨日踏破したダンジョンの前でも良かったのだけれど。
冒険者しか入れないダンジョンもあるし、ライセンスだけは取っておかないと。
サクヤ達のパーティに合流する形になるから、一応取れるならBランク以上の冒険者証を。
「登録する場所は何処にしますか?私達は、妖精の国の王都、ハルドワイラで登録しましたが」
冒険者は基本的に国を跨いでも問題ない。
というか、各国は未だ仲が悪いが、冒険者ギルドだけは独立した自治体として機能している。
冒険者として登録されている人間は、基本的に国から何かを言われて行動を制限されることがない。
戦争などが始まれば招集は掛かるが、参加するかどうか決めるのは冒険者の自由。
どの国に付くかさえ、個人の裁量に任される。
戦争などに関与せず、自由気ままに冒険できるのも、冒険者のメリットだ。
その代わり、税金は通常の国民よりも高いし、低ランクの冒険者は、年会費を払うだけでやっとだったりもする。
まぁ、自由な分、お金が掛かるのが冒険者という職業だ。
たまに一獲千金を夢見て、冒険者になる馬鹿な人間もいるが、大抵は、年会費を収められずに資格をはく奪される。
その点、既にサクヤ、ミズキ、シルビアがSランク冒険者として活動している私達は、ある一定以上の成績で入会出来ればそれでいい。
お金は既に十分あるし、使い道も殆どない。
あるとすれば、郊外に拠点となる屋敷があれば良いな、なんて考えている程度だ。
「サクヤ。ハルドワイラに行きましょう」
「はい。あの冒険者ギルドなら、私達も顔が利きますし、うってつけかと」
そう言って、サクヤが転移魔術を発動させる。
多人数を同時に運ぶ転移魔術は、結構な大規模魔術だ。
自分だけを転移させるのとはわけが違う。
けれど、サクヤは苦も無く転移魔術を扱う。
まるで、空間属性を所有しているかのように。
前から不思議だったんだけど、エクストラスキルには空間属性魔術記載されてないんだよねぇ。
此処まで扱えるなら、もう殆ど習得したのと変わらないと思うのだけれど。
魔術適正とは不思議なものだ。
そんなことを思いながら、私は自室からハルドワイラに転移した。
妖精の国、ハルドワイラでは、主にエルフやドワーフが生活している。
ドワーフとエルフは、妖精族なのだ。
まぁ、主にというだけで、普通の人族や、獣人、竜人も住んでいる。
ドワーフが多いということもあって、鍛冶屋が多く、ここで打ち出される武器は交流がある国との特産品として売られている。
朝一なので、お腹が空いている。
折角だから露店で食事してもいいかなと、気になった店に足を運ぶ。
神獣達は、私が作った食事でなければ興味はないらしく、買い食いには付き合ってくれなかった。
ホーンラビットの串焼きを一本と、黒パンにチーズとハムが挟んであるサンドイッチを食べ、やっぱりあんまり美味しくないなと肩を落としながら、冒険者ギルドへ向かう。
そんな王都の街中の、大通りに面した場所に5階建ての冒険者ギルドハルドワイラ本部があった。
ギルドの一口を潜ると、サクヤ、ミズキ、シルビアの顔を見た冒険者達が、一瞬にして静まり返る。
「おいみろよ、獄炎蝶だぞ」
「帰ってきたのか。つかあの絶世の美女は誰だ?サクヤの女か?」
「シルビアも綺麗な顔してんのに、あの女と一緒だと霞んじまうな…」
ざわざわと小声であることないこと話始める冒険者達。
一部は私の顔を見て、息も忘れて恍惚としている。
「レイ」
エルノアに呼ばれて振り向くと、突然腕の中に閉じ込められ、唇を塞がれた。
完全にこちらに注目している冒険者達に見せ付けるように、深く舌を絡められる。
「っー」
がっちり私を掴んでいるエルノアの胸を叩くと、やっと解放された。
「馬鹿!何考えてるの?!」
「誰のものか教えておかないと」
「私は誰のものでもないわよ!」
ミズキが呆れかえったようにため息を吐き、サクヤは頭が痛そうにこめかみを抑え、シルビアは真っ赤になって目をキラキラさせている。
それどころじゃないっていうのに。
「エルノア。程々にしてください」
「やだね。レイが見られてるのが凄い腹立つ」
「余計注目を集めてどうするんですか」
今の私は認識阻害を掛けていない。
冒険者登録するのに、顔が分からないままでは出来ないからだ。
「カロリーヌさん、新入冒険者です。手続きを」
「は、はい!」
カロリーヌと呼ばれた受付嬢は、サクヤの美貌にうっとりしながら、書類を取り出す。
サクヤの目には多分受付嬢としか映っていないんだろうなぁなんて思いながら、昨日のサクヤを思い出す。
昨日は妖艶な色気がだだ洩れだった。
ただでさえ綺麗な顔立ちが、1.5倍増しに見えるほどに。
色気を纏っていなくてもノックアウトされてしまう顔面耐性のない女性では、サクヤの相手は務まらない。
まぁ、誰か好きになることがあるのなら応援してあげるけれど。
そんなことを考えながら、渡された紙の記入欄に、必要事項を書き込んでゆく。
名前はレイ、魔術適正は…氷と風にしとこう。
職業は魔術師、使える階梯魔術は…魔術師だし10階梯ぐらいでいいだろう。
宮廷魔術師と同じレベルはマズいかな。
いや、どうせすぐSランクになるんだし、いいか。
そんな感じで記入欄を埋め、受付嬢に提出する。
エルノアも書けたらしく、受付に紙を持ってきた。
「登録は通常はFランクから始まりますが、実力がある方はスキップ申請が可能です。スキップする場合、同じレベルの強さの魔獣と戦っていただき、強さに見合ったランクに決定されます。また、魔獣との戦闘で負った傷は冒険者ギルドでは関与いたしません「スキップでお願いします」
「俺も」
長くなりそうだったので、スキップ申請を強行した。
「あ…はい。分かりました…。エルノア様はローグ、レイ様は魔術師ですね。では、演習場へどうぞ」
通された演習場には、暇な冒険者達が見物に詰め掛けていた。
まぁ、気持ちは分からなくもない。
エルノアの派手な演出で一躍有名人になった私達が、どれほど出来るか見たいのだろう。




