創造魔術に創れない物はありません
転送魔方陣が描かれた石板はすぐに見つかり、28階層へと転移した。
次は地平線の彼方まで続く、広大な草原だった。
モンスターの気配は殆どない。
ただ、ただ、広い。
普通の冒険者なら、食料が尽きて餓死するだろう広大な草原。
これは空を飛んでも数日かかりそうだと思った。
ミズキがドラゴンの姿に戻り、全員を背に乗せて空を駆ける。
五時間ほど飛んで、地上に降り、夕食になった。
私は大きな鍋を創造魔術で作り、水を沸騰させている間に粉から麺を作る。
寝かせる時間を時間加速魔術ですっ飛ばし、何度か捏ねて寝かせるを繰り返して、パスタマシーンを創造し、麺を作り出す。
創造魔術、何でもありだ。
見たことのあるものなら、何でも作れるこの魔術は実は百階梯を優に超える。
機械が麺をせっせと作ってくれている間に、タマネギをみじん切りにし、トマトを煮込み、ひき肉、タマネギを加え、ケチャップ、塩胡椒、コンソメ、ニンニク、砂糖で味を調える。
トマトはぐずぐずに崩れるまで時間加速魔術ですっ飛ばし、ことこと煮込んでミートソースを作る。
麺を沸騰した鍋でゆでて、水を切り、出来上がったミートソースをかけて出来上がり。
時間加速魔術を使ったから、20分ほどの調理時間だろうか。
麺から作ったにしては早いと思う。
「はい、できたよ」
最早創造魔術であれこれ創り出すことに何も言わなくなった聖獣達。
今度はどんな珍味なのだろうと、ミートスパゲティに興味津々だ。
「これはフォークでこうやってくるくる巻いて食べるの」
実演して見せると、ミズキもサクヤもエルノアもシルビアも、パスタをフォークに巻き付けてたどたどしく口に運ぶ。
「うわぁ…美味しい…」
シルビアが感動したように感想を零し、もくもくと食べ始める。
「これは何ですか?」
サクヤが少しずつ料理に興味が湧いてきたのか、食べながら質問を投げかけてくる。
「パスタだよ。ミートソースパスタ」
「ふむ、他にも味付けを変えられそうな料理ですね」
「うん、色々あるよ。また他の味も作ってあげる」
そんな会話をしながら食事し、ミズキとサクヤ、エルノアは当然のようにおかわりした。
大体、皆がどれぐらい食べるか把握できて来た気がする。
タイミングよくローゼンの器が返ってきて、器にメモが入っていた。
―もっと食べたいです。
どことなく切なげなローゼンの顔が思い浮かんで、パスタを二人前盛って転送しておいた。
メモなんかじゃなくても、念話してくればいいのに。
健気な聖獣にくすりと笑っていると、シルビアが不思議そうな顔で私を見ていた。
何でもないと首を振って、洗い物を済ませたシルビアにお礼を言った。
ここ五日程お風呂に入っていない。
浄化魔術で汚れを落としているとはいえ、入らないとなんだか気持ち悪い。
屋敷に帰れば良いのだが、そうするとなんだかダンジョンを攻略しているという今の気分を阻害する。
そもそも、変える屋敷があるのは今だけだし、学園を卒業したら本格的に冒険者になろうと思っているのだから、こういう状況には慣れておかなければならない。
ということで、大きめのバスタブを創造魔術で創りだし、お湯を張ってお風呂に入ることにした。
シルビアは元がセイレーン。水場が好きな聖獣だ。
羨ましそうにしていたので、手招きして一緒にお湯に浸かる。
2人入っても十分な大きさのバスタブなので、問題ない。
「はぁ…暖かいお湯に浸かるのって気持ちいいんですね…」
シルビアは幸せそうにお風呂を堪能している。
男達は風呂には興味がないのか、顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。
まぁ、裸を見られたって欲情してくるわけでもないし、問題はない。
仮に欲情したとしても、聖獣という立場上、手を出してくることはないだろう。
そんな信頼があるから、特に不可視結界などは張っていない。
まぁ、バスタオル巻いてるし、問題ないだろうと思いつつ、暫くお湯に浸かってリラックス気分を味わった。
お風呂から上がってネグリジェに着替え、バスタブを空間ボックスに収納した。
ミズキとサクヤ、エルノアは相変わらずこちらを見ようとしない。
まぁ、ネグリジェなんて下着同然だし、男に見せる姿ではないか。
なんて思いつつ、ベッドに潜り込む。
聖獣達はまだ睡眠が要らない様だ。
私が寝てる間、暇じゃないのかな、なんて思いながら、眠りについた。




