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聖獣の前にはダンジョンもただの観光地

翌日。

ダンジョンの中に朝日はないが、何となく朝が来た気がして目を覚ます。

服を着替えて、朝食に人数分のナスとひき肉のチーズオムレツを作って、皆で食べる。

皆美味しそうに食べていたので、満足だ。

昨日の深夜に戻ってきていたお皿にもオムレツを入れて、ローゼンにも転送魔術で送っておいた。

シルビアが洗い物をちゃちゃっと片付けてくれたら、出発だ。


既に道中にもAランクのモンスターが出てくるようになっていたが、ミズキの敵ではなく。

私も後ろからタイミングを見計らって援護射撃しているため、サクヤとシルビア、エルノアの出番は今のところ無い。

小二時間程でボス部屋に辿り着き、ボス部屋へ入る。

ボスはAランクのケルベロスを中心にA-ランクのオルトロスが数十体待ち構えていた。

入ってすぐに、ケルベロスとオルトロスの命を氷魔術で刈り取ってしまう。


「レイ様が居るとボスも楽ですね」


「当たり前でしょ」


サクヤが感嘆の声を漏らし、エルノアが当然のように胸を張る。

まぁ、言わせておけばいいだろう。

宝箱から宝石が大小十個ほど出てきたので回収して次の階層へ続く階段を降りた。


26階層。

降り立った先は、密林地帯だった。

階層探知を掛けたミズキが顔を顰める。


「…広いな」


「そうなの?」


「ああ。歩いて行ける道もねぇ。この生い茂ったジャングルん中を進むのは骨だ」


面倒くさそうにがしがしと頭を掻くミズキ。

サクヤが暫く悩み、ミズキに提案する。


「仕方ありませんね。ミズキ、本来の姿に戻っては如何です?貴方なら私達全員を乗せて飛べるでしょう」


「そりゃお前にも出来るだろうが」


ドラゴンのミズキは言うまでもないが、ルフのサクヤも巨鳥だ。

この場にいる全員を乗せて空を飛ぶことも簡単な事だろう。

何故擬人化を解くのを嫌がっているのかは知る由もないが。


「はぁ…しゃあねぇ。サクヤ。交代だからな」


「ええ。わかりました」


にこにこと頷くサクヤを見て、再度ため息を吐いたミズキが、擬人化を解く。

淡い光がミズキを包み込み、膨張していく。

次の瞬間には、体長15メートルはありそうな立派なドラゴンが鎮座していた。

鱗は闇色で瞳は紫紺。

典型的なダークドラゴンだ。


―乗れ。


念話でそう告げて、身を屈めるミズキの背に乗ると、バサッと翼がはためいて、ミズキの巨体が空へと舞い上がった。

ぐんぐんとスピードが加速するが、不思議と風圧で押さえつけられることもない。

ミズキが結界を張ってくれているのだろう。

30分ほど飛んだだろうか。

距離にして凡そ300キロ程。


―あの辺りだな。Sランクモンスターだ。


ミズキが降下を始めると、シャァアアアアアとヘビ特有の鳴き声が周囲に響き渡った。

まだ遠いが、Sランクモンスターの姿を私の眼が捕らえる。

巨大な太いヘビのモンスター。

目が合うだけで石化の状態異常を引き起こさせる、怪物。

バジリスク。


―レイ、奴の目を見るなよ。


「うん、分かった」


急降下していくミズキが、口から大量の強酸のブレスを吐き出す。

金属すらどろどろに溶かし切る、黒竜の必殺技だ。

強酸を浴びたバジリスクは、身体を解かされながらも、一矢報いようと石化の呪いを周囲に撒き散らした。

聖獣達は状態異常耐性があるから余程のことが無い限り大丈夫だろうけれど、私一人だったら結構危なかっただろう。

奮闘虚しく、強酸に抗えず、溶け切ったバジリスクは、巨大な魔石と、石化の呪いを発動させる目を残して息絶えた。


ミズキが着陸し、その背中から降り立つと、ドロップ品を回収して、周りを見渡す。


「ねぇサクヤ。階段は?」


「こういう広大なマップは次の階層に降りる転移装置があるんですよ。ほら、ここに」


邪魔な蔦を切り払ったサクヤが、転移魔術が刻まれている巨大な石板を指した。

ミズキが人の姿に戻り、転移魔術の効果範囲内に全員が入ったのを確認して、サクヤが石板の魔方陣に魔力を流した。


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