ハンバーグは正義です
心を癒されたところで、25階層への階段を下りた。
階段を降りた先には、また蔦が犇めいていた。
一応確認の為探知魔術を掛けるが、人の気配は無いようだった。
モンスターを蹴散らしながら、30分ほど進み、少し開けた場所にでて、ミズキがその場で腰を下ろした。
「そろそろ飯だろ?」
「うん。ありがと」
周囲に結界魔術を張ってくれたサクヤにもお礼を言って、調理器具を取り出す。
材料はまだ豊富にある。
なら何が食べたいかだけど…。
あ、あれを作ろう。
私は創造魔術でフードプロセッサーを創りだした。
見たこともないプラスチックで出来た機械を見て、ミズキが呆れるようなため息を吐き出した。
周囲の反応はさておいて、私はオーク肉の塊と牛肉の塊をある程度の大きさに切って、フードプロセッサーの中に放り込む。
スイッチを入れると、魔力を電力に変えて、動き出した機械があっという間にミンチ肉を作ってくれた。
タマネギをみじん切りにして、ミンチ肉と卵とパン粉を入れて混ぜ合わせる。
手ごねなので、あらかじめ手は浄化魔術で綺麗にしてある。
塩胡椒にナツメグを創造魔術で作り出し、振り入れて更に味が馴染むまで捏ねて、形を作っていく。
フライパンに油をひいて、丁度いい大きさに成形したハンバーグを焼いていく。
最初は強火で2分。
裏返して弱火にして蓋を閉めて6分。
焼き時間は地球の有名店の受け売りだ。
一度に3個しか焼けないため、先にミズキとシルビア、サクヤには食べてもらう。
一口食べて、ミズキがぐっと唸った。
素直に美味しいと言わないミズキだが、反応を見れば好きか嫌いかは分かる。
サクヤも一口食べて、目を見開いた。
シルビアは口に入れた瞬間、涙を零した。
「こんな美味しいものがこの世にあったんですね!」
「…そうですね、これは…流石レイ様です」
一口一口、味わって食べているサクヤと違い、すぐに食べ終わってしまったミズキが、物足りなさそうにこちらを見る。
「…もうねぇのか?」
「ミズキ、もう1個食べるの?結構大きめに焼いたんだけど」
「…あるならくれ」
「はいはい。あと3つ分はあるかな。ローゼンにも送らないといけないから、残り二つね」
ミズキのお皿に焼き立てのハンバーグを入れてやり、エルノアにもお皿を渡して、次を焼きながら、ハンバーグに箸を入れる。
「そういやレイのその食器なんだ?」
フォークでハンバーグを食べていたミズキが、私が使っている箸を指さす。
そういえばこの世界には箸なんてなかったっけ。
地球の料理に感化されてから、箸も使うようになったんだけど、多分練習しなきゃ使えないよね。
「お箸っていう食器。フォークより使い勝手がいいから創ったんだけど、使ってみる?」
私が箸でハンバーグを挟んで口に運ぶのを見て、ミズキが首を振る。
「…いや、面倒くさそうだからいい」
そう言って、ハンバーグに齧り付く。
うん、肉汁もうまく閉じ込められてるし、焼き加減もばっちり。
地球のお店に行ったことは無いけど、まぁ、平均的な味にはなってるでしょ。
と納得しながらハンバーグを食べ終える。
丁度次も焼きあがったので、毎回転送魔術で送り返されてくるローゼン用のお皿に一つ入れて、アルゼイン伯爵家のローゼンの部屋に送っておく。
「私もおかわりしていいですか?」
サクヤがどことなく恥ずかしそうに、声を上げる。
聖獣にとって、沢山食べることは恥ずかしい事なのだろうか。
流石によくわからない。
サクヤのお皿にハンバーグを入れてやり、美味しそうに食べるのを見守る。
うん、サクヤって普段あまり表情変わらないけど、美味しいものを食べているときはどことなく幸せそうな顔をしてる。
残り一つはエルノアがおかわりして、ハンバーグは全て完食した。
エルノアも無口だけどこちらは表情ですぐわかる。
まぁ、私がどんなに不味いものを作っても、無理して食べきってしまいそうな危うさはあるけれど。
「あ、シルビア。油で落ちない時はお湯にするといいよ」
「はい、わかりました」
水魔術に特化した彼女ならお湯を出すぐらい簡単だろう。
心配する必要もなく、綺麗に油を落としてくれたシルビアにお礼を言って、空間ボックスに調理器具を仕舞い、空間ボックスからベッドを取り出す。
もう外は夜だろう。
ここ12年で身に付いた睡魔が体を襲う。
浄化魔術で体の汚れを落とし、服も寝苦しいのでネグリジェに着替える。
ベッドの周りに視覚遮断結界を貼っているから、裸を見られることもない。
着替え終わって結界を解除し、布団の中に潜り込む。
聖獣達は見張りだ。
本来は一人で良いが、彼らに睡眠は基本的に必要ない。
此処に来るまでに体力を消耗するような戦闘はなかったため、寝ずに番をするのだろう。
結界を張っていればまぁ睡眠ぐらいはとれるが、誰かが見張っていてくれるだけで安心感が増す。
私は彼らに感謝しながら目を閉じた。




