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心配性な聖獣達

そこからはいつも通り、出てきた敵を凍らせ、焼き払い、時には押しつぶして、ミズキが殴りかかる間もなくモンスターを殲滅していく。

早歩き程度の歩速なら、気配察知だけで十分殲滅しうる魔術を展開できる。

そうして辿り着いたボス部屋は相変わらず蔦がびっしり生えたレンガ調の壁。

モンスターはAランク。

だが数が多かった。

ボスらしきオルトロスが三体、ヘルハウンドが10体に、ブラッディウルフが20体。

突っ込んでいこうとするミズキを引き留めて、二十階梯氷魔術で命まで凍らせて刈り取った。

階段の前に宝箱が置いてあったので、鑑定する。


非常に珍しい宝箱。

開けると猛毒のガスを噴射し、火球が放たれる。


毒は解毒すればいいし、火球程度なら多重結界を通り抜けることはない。

そう思い、蓋を開けると、周囲に毒ガスが蔓延し、私の多重結界が火球を弾いた。

案の定猛毒を受けていたため、すぐに解毒魔術で毒を治す。

けれど、受けたダメージまでは治らず、ゴホッと咳き込むと吐血した。


「っー!レイ!お前…状態異常耐性持ってねぇのか?!なんで開けた!」


「えっと…解毒すればいいかなと思って…」


「鑑定したんだろ!毒が出るなら俺らに任せりゃいいだろうが!」


ミズキのいうことも最もだ。

わざわざ頼むことでもないかと、適当に開けた私が悪い。

聖獣達にとって自分がどれほど大切な存在か、などという至極当たり前なことに思い至らなかった。

シルビアは回復魔術を掛けようとするし、サクヤもエルノアも動揺している。


「ごめんなさい、もう大丈夫だから」


反省した。

ミズキのあんなに焦った顔は初めて見た。

シルビアの顔から血の気が引き、冷静なサクヤが動揺を露にし、エルノアは気付かなかった自分を責め立てる。

今までは状態異常耐性がある聖獣達が宝箱を開けていたから問題がなかったのだ。

今の私には毒耐性も何もない。

普通の冒険者達だって、鑑定も耐毒性も無しに正面から宝箱を開けたりしない。

必ずシーフの職業を持つ冒険者が罠解除してから開けるのだ。


まだ動揺を抑えきれない聖獣達を一人ずつ頭を撫でて、大丈夫だと落ち着かせる。

手に着いた血は浄化魔術で落として、全員が落ち着いたのを見計らってから宝箱の中身を覗き込む。


中にあったのは大きなイエローダイヤモンドの綺麗な首飾りだった。

マジックアイテムらしく、効果は魔力回復を高めるらしい。


「シルビアなら似合うかしら」


「え、私ですか?」


私は既に指輪もネックレスも身に着けている。

それも神級のアーティファクトを。

これらには劣るが、回復魔術を使えるシルビアがこのマジックアイテムを身に着けるのは理にかなっているだろう。


ちょいちょいと手招きすると、シルビアは私の前にしゃがみこんだ。

その首にネックレスを付けてやると、ぱぁっと嬉しそうに目を輝かせた。


冒険者らしいローブ姿に、イエローダイヤモンドが気品を添える。

うん、シルビア可愛い。

衝動に駆られて、シルビアをぎゅうっと抱きしめる。

女同士なのに耳まで真っ赤になっているシルビアはどういう感性をしているんだろうか。


「はわわわ…レイ様?」


焦っている。

同時に困惑している。

どうすればいいか分からず、私の顔を見上げる。

流石に可哀そうなので解放してあげた。

くすくすと笑いながら、ポンポンと頭を撫でて、照れ照れのシルビアが俯く。

ミズキが不愉快そうに舌打ちし、エルノアはシルビアを羨まし気な目で睨んでいる。

サクヤは微笑ましそうに見守っていた。

内心は分からないけれど。


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