魔力ステータスを暴露する
恒例となったお姫様抱っこでダンジョンを下へ下へと駆け抜けていく。
出現モンスターはBランク程度には上がってきていて、今まで素手で殴っていたミズキも、ナックルを使うようになっていた。
「そろそろ、走り抜けるのは限界かもしれませんね」
私を抱き上げて走っていたサクヤが、急に足を止めた。
モンスターハウスだ。
サクヤがそっと私を地面に降ろして、立たせてくれる。
幾らミズキがSSランクの聖獣とはいえ、Bランクモンスターが百匹近く沸き上がるモンスターハウスは一人で殲滅するのは難しい。
ざっと見た限り、ミノタウロス、オーガ、トロールの混成部隊だ。
私の魔術なら一瞬で全滅させられるが、聖獣達は、魔力を温存しておきたいようだった。
そういえば此処まで一度も魔術を使っているところを見ていない。
ダンジョンは深層になるほど凶悪化する。
この程度の雑魚に魔力を消費するのが勿体ないのだろう。
ミズキのナックルも、サクヤの魔剣も、シルビアの弓も、神級のアーティファクトだ。
攻撃力は言わずもがな。
急所を狙わずとも、当てるだけで神具に込められた神力によって、モンスター達が霧散する。
五分と掛からず、モンスターを全滅させた。
神級アーティファクトは持っていないエルノアも、撃ち漏らしの急所を狙って暗器を放ち、何体かは撃破している。
パーティを組んでいる為、私にも経験値は強制的に入ってくる。
まだまともに戦っても居ない私のレベルは既に40を超えている。
そろそろ戦闘経験を積みたいな、なんて考えつつ、モンスターからのドロップアイテムを風魔術で集め、空間ボックスに収納する。
「レイ様。その程度のドロップ品など、大した価値にはなりませんよ?」
「まぁ一応ね。それから、次の階から私も戦うから」
そう宣言すると、サクヤもエルノアも少し困ったような顔をした。
「レイ様。私たちは頼りないですか?」
まるで、存在意義を奪われたとでも言いたげに、あからさまにしゅんとなるサクヤ。
そういうつもりで言ったんじゃないのに。
「そんなこと、あるわけないじゃない。私は魔術熟練度をあげたいだけ」
「それ以上上げてどうするんだよ。国でも滅ぼすつもりか?」
ぶっきらぼうに投げかけられるミズキの問いに、私は首を傾げた。
「だって、ダンジョン回り終わったら、迷宮にもいくでしょ?」
私の言葉に、聖獣達はぽかんと口を開けた。
迷宮とは、ダンジョンの上位互換。
殆どのダンジョンはSクラスまでのモンスターしか出現しないが、迷宮は違う。
推奨パーティはSSSランクのみ。
実質勇者パーティだけをを更に強化するための極悪難易度として有名だ。
この世界に迷宮と呼ばれる入り口は4つ。
全て突破すると神にすら匹敵する力を得られると言われている。
そんな迷宮に挑むのだ。
聖獣のままでは力不足。
ここにいる全員が神獣にランクアップするのが必須条件だ。
「…あー理由は分かった。つまり俺らはさっさと神獣にならなきゃいけねぇってわけだ」
「私の料理を食べることで、神力は上がってるんでしょう?なら貴方達が神獣になるのは時間の問題だろうから、私も強くならなくちゃ」
ミズキは面倒くさそうにがしがしと頭を掻いている。
サクヤもエルノアもシルビアも一応納得したというように頷いた。
「わかりました。ですがレイ様の魔力も無限という訳ではないでしょうから」
サクヤがまた心配モードだ。
しかし、私の魔力上限を舐めてもらっては困る。
「サクヤ、私の魔力、幾つか知ってる?」
「いえ、他人のステータスを見られるのは鑑定眼を持つ人間だけですから」
「99億。この魔力で、おおよそ一億の幻獣を召喚してる。でも、コロネリア国が幻獣を受け入れなかったから、一千五百万匹分は魔力に戻してるの。ダンジョンの魔力は濃いから回復も早い。十階梯から二十階梯程度の魔術なら、五秒もすれば元通りよ」
そう、当然のことのように言い切ると、サクヤは無表情で硬直し、ミズキはお腹を抱えて笑い出し、エルノアは初めて知った私の魔力の無尽蔵っぷりを頭が痛いとでも言いたげにこめかみを抑える。
シルビアはそれはもう、尊敬の眼差しで目をキラキラさせていた。




