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神を敵に回すそうです

「その前世というのは…レイ様は昔どんな人だったのですか?」


サクヤは食べることも忘れ、私に質問を重ねる。

けれど、本当に聞いてもいい事なのか、少し不安そうな顔をしている。

エルノアも今まで疑問にさえ思わなかったことが不思議なようだ。


「いいわ、貴方達なら信用できるしね。私の前世は女神アフロディーテだったの。」


「「「「…………」」」」


声も出ないのか、茫然と私を見つめる四人。

食事の手は完全に止まっている。

冷めるわよと一言呟くと、勿体ないとでも言わんばかりに食べ始めた。

結局4人は、鍋の中のスープが空になるまでもくもくと食べ続けた。

私は一杯でお腹いっぱいなので、食べてくれて助かった。


「なんだこれ…神力が増えていく…」


「ほんとだ。凄く強くなった気がします」


どうやら私が作る料理には、召喚獣達を強化する力があるらしい。

自分たちの状態を確認して、ひとしきりわいわい騒いだ後、シルビアが後片づけを申し出てくれたので、お願いした。

仮にもセイレーン。水の魔術には長けている。

洗い物ぐらい出来るだろう。


「で、その元女神とやらはなんで転生したんだ?」


シルビアが食器を洗っている間、誰もが聞くに聞けなかったことをさらりとミズキが口にした。

私が元女神だということは一応納得したらしい。


「嫉妬に狂う女は怖いってことだけ言っておくわ」


「殺されたのか」


「ええ」


こくりと頷くと、ミズキから膨大な殺気が立ち上った。

見ると、サクヤとエルノアも殺気を必死で抑えている。


「はっ…なら神界に殴り込みに行く目的が出来たな」


「今の貴方達じゃ無理よ。神罰が下って終わりだわ」


「どこまで強くなればいい?」


ミズキの目は本気だ。

紫紺の瞳が、憎悪に燃えている。


「真なる神獣にまでランクアップ出来れば、下級神なら殺せるでしょうね」


「あんたを殺したのは、下級神か?」


「いいえ、中級神よ」


「そいつを殺るには?」


「究極神獣になれば、上級神も殺せるでしょうね」


簡単に言っているが、究極神獣なんてものはなろうとしてなれるものではない。

真なる神獣ですら、至れるのは神獣の中の一握り。

究極神獣なんてものは、おとぎ話の神話の世界の生き物だ。

何千年、何万年と時を生きたとしても、そこに辿り着く前に、ほとんどの生き物が死に絶えるだろう。

私のユニークスキル、契約者の心臓は、召喚契約を結んでいる相手の能力の一部を還元されるかわりに、契約している召喚獣達の霊格を高め続ける効果を持つ。

霊格を高めるということは、ランクアップがしやすくなるということ。

だが、もしそうだとしても、究極神獣になるために必要な膨大な神力を、補うなんて不可能に近い。

もし、召喚契約よりも強固な繋がりが出来れば話は変わってくるかもしれないけれど…。


「なってやるよ。究極神獣。たとえ神に歯向かってでもな」


宣言するようにそう告げるミズキは、自信に溢れていた。

紫紺の瞳には仄暗い復讐心が灯っていた。


「私も、お手伝いします」


今まで黙って聞いていたサクヤも、ミズキの言葉に同意を示す。

忠誠心の高いサクヤのことだから、私を殺した者を許せないのかもしれない。


「俺も、レイの役に立てるなら」


エルノアまで殺気を孕んだ声で意思を示した。

けれど私は、前世にあまり未練がない。

暇さえあれば真理の鏡を覗き込んで、地上界の生き物の生きざまを眺めるだけの日々。

信仰の証として、貢物は送られてきていたけれど、自分で買い物してみたかったし、地上界に降りてみたかった。

最高神という立場上、そうすることは出来なかったけれど。


「そう、ありがとう。でも、私は報復は考えていないの。魔人族や竜人族の信仰対象は変えてやろうとは思ってるけど、精々その程度よ。せっかく人族として生まれたんだから、地上界でしか出来ないことを沢山してみたいわ。その上で、貴方達が強くなって、神に挑みたいというなら止めはしないけれどね」


そう、内なる心情を吐露すると、シルビアが涙を流した。


「恨んで、いないんですか?殺されたのに…」


「ええ。今の生活も気に入っているわ。神界は暇だったし、男神は勝手に侍るし、そのせいで嫉妬されるしで面倒だったもの」


私の話を聞いたシルビアは、少し考えた後激高した。


「それじゃあその頭空っぽの男神も同罪じゃないですか!しかもレイ様が攻撃されたのに守ることもできないなんて!」


私はシルビアの頭を撫でて慰めながら言葉を続ける。


「最高神を殺せる呪具なんてとんでもないアーティファクトよ。彼らには信仰を集める力がなかったから、私を守れないのは当然よ」


「それでも!自分が慕う女性ぐらい命張って助けるのが男なんじゃないんですか?!」


悔しそうに涙を流すシルビアを抱きしめながら、エルノアに視線を向けると、当然だとでも言わんばかりの瞳と目があった。

まぁ、もう昔の話だからどうだっていい。

幾ら口で惚れている、愛していると言っていても、自分の命を犠牲にするほど男気の溢れた神ではなかったというだけの話だ。

だからこそ彼らの言葉は心に響かなかったし、迷惑もしていた。


「まぁ、もう昔の話だし、どうだっていいわ。それよりも、片付いたなら先に進みましょう」


シルビアが洗ってくれた食器や調理器具を空間ボックスに仕舞い、ミズキに結界を解かせて立ち上がる。


シルビアはまだ納得していないらしいが、まぁそれでもいい。

私のアフロディーテとしての神格まで奪われたわけではない。

地上界では神力の回復が遅いが、その代わり魔力と神聖力だけは膨大だ。

あとは魔力と神聖力を昇華させて神力に変えるだけだが、今のままでは時間が掛かる。

レベルが100程度まで上がれば、体力も増える為、昇華率を上げられる。

因みにどうして経験値共有化でレベルを上げなかったのかと言うと、レベルは上がるにつれてスキルの習得速度が落ちるためだ。

レベル1なら様々なスキルを取得できる可能性があるが、レベルが上がり過ぎると、レアなスキルしか入手できなくなる。

可能性の芽を摘まないためのダンジョン探索なのだ。


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