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幻魔術の恐ろしさ

シャン…とかすかな音がして、結界魔術が解かれると、会場は歓声に沸いた。

神童様!と声高に私を持ち上げようとする有力貴族たちや、声も出ない魔術師達。


父の合図で楽団が音楽を奏で始めたのを皮切りに、第一王子が、私と父の前に現れた。


「お初にお目に掛かります、ミドラー公爵閣下、ミドラー公爵令嬢。私はこの国の第一王子、ファルムス・ロイ・ペンテシレアと申します」


そう言って一礼するさまは、優雅で毅然としている。

しかし、こちらも一礼し目を合わせた瞬間、私を覆う精神防衛魔術が作動した。

この男、今、私を魅了しようとしたのか。

冷ややかな視線を送ると、王子は顔色を真っ青にし。冷や汗を流しながらそそくさと退散していった。


「ん?レイチェル、どうかしたのか?」


「いえ、何でも。あんな男が第一王子だなんて国王も可哀そうにと思っただけです」


自分でも氷のように冷えた声が出たことが意外だった。

父は私の様子と立ち去った王子に視線を彷徨わせ、はっとこちらを見た。


「何かされたのか?」


「魅了と誘惑の魔術でしょう。問題ありません、レジストしましたので」


冷え冷えと言い放つと、父は無表情になり、王子の背を睨みつけた。

魔力が籠った眼力が、王子の背に殺気として襲い掛かる。


「父上、仮にも王族です。殺意は抑えてください」


私がやらなかったことを父がやったものだから妙に落ち着いていられた。

後でエルノアにお人形さんにしてもらおう。

精神系の魔術を公の場で使った罪は重い。

例え王族だろうと、公爵家が王に訴えれば、謹慎処分程度では済まないだろう。

あれが第一王子。

先が思いやられる。

どうせ魔術の才能を妬んでの事だろうが、あの王子は放っておくと危険だ。

精神操作、記憶改竄、精神拷問のフルコースで明日にでも心を入れ替えるだろう。

幻魔術の特性は、レジストさえされなければ何をやっても、本人にさえ気づかれないことだ。

エルノアの魔術到達域は三十階梯越え。

つまり他の精神系魔術も相応の威力と効果がある。

十一階梯の魔術を使えば正しく十一階梯の威力になるわけではないのだ。

魔術はもっと奥が深い。

例え下位の階梯でもレジスト不可能な魔力を込めれば、その効果は正しく発揮される。

つまり、エルノアの幻魔術に対抗できるものなど、この国には居ないのだ。


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