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ある程度の威信は守ります

そしてお披露目パーティ当日。

各有名貴族の令息、令嬢、ご婦人、紳士。そしてなぜか第一王子まで来ることになっている、お披露目会。

今まで社交界には顔を出したこともなかったから、神童の噂が本当かどうか、疑っているものも多いと聞く。

私は侍女たちにうんとめかしこまれて、パーティ会場に降り立った。


―なんと美しい…


―まるで女神様のようですわね。


―こんな方が魔術の才まで持ち合わせていらっしゃるとは…。


パーティが初めてとは言ったものの、その機会を恵まれなかったわけではない。

父は毎年私の誕生パーティもやりたがってはいた。

けれど、私が本当に男に興味がないことを知ると、無理にとはいわない、と今まで屋敷の中で大事に育ててくれたのだ。

父にも母にも似ていない特殊な容姿。

銀色の髪とブルーサファイアの瞳。

古来より人族の間では、銀色の髪は神聖視され、特別なものだと言われている。

何より、唯の青でもなく、空色でもなく、宝石のごときサファイアの瞳は、女神アフロディーテの象徴だった。

そんな子供が突然生まれてきてみて欲しい。

それはそれは人目に付かない屋敷の中で大切に育てられても仕方ないことだろう。

母親のミリアンヌとは屋敷の中では余り出会わない。

自分にも父親にも似ていない子供のことを煙たがっているのかもしれないが、直接顔に出されたことはない。

もし出会っても、使用人のように深々と一礼し、去って行ってしまう。

魔族でも、人族が信仰している女神の特徴ぐらいは知っている。

そんな女神そっくりの子供が生まれれば、そうなってしまっても仕方なかった。

だって実際本人なわけだし。

父は気にせずいつも私のことを気にかけてくれるが、それも段々申し訳なくなってきた。

どの道私は誰の家にも嫁がず、国を出て冒険者になるのだから、言ってしまえば公爵家の獄潰しに変わりない。

将来に期待が持てない娘など、本当なら物置小屋に住まわされて、使用人扱いされても文句は言えない。

だが、私が夢を語った後も、こうして愛情を注ぎ、機会を与えてくれる父には感謝しかない。

もしかしたら天罰が怖いから私を無下にできないのだろうかと考えたこともあった。

でも、父の愛情は本物だ。

玲結な公爵家当主として腕利きの噂に名高い父だが、私と居る時はよく笑う。

可愛くて可愛くて仕方のない子供を見る眼差しに、偽りはなかった。


「皆さま、この度は我が公爵家長女、レイチェルのお披露目パーティーに集まっていただき、誠に有難うございます。我が娘の魔術の腕前は皆さまご存じの通りです。この度お披露目パーティを行ったのは、その事実を、周知させるために他なりません」


そう告げて父が私に向かって微笑んだ。

つまり噂を確実にするために魔術を見せろと言うことだろう。


「対魔術結界術式、三重展開」


先ず、観客と自分との間に結界魔術を三重にして展開する。

ついでに屋敷全体を対魔術結界で覆う。

これで魔術を使用しても問題ない空間が出来上がった。


「第十五階梯氷魔術、白艶の調べ」



魔術発動と同時に結界魔術に覆われた何もない空間が一瞬にして氷漬けになる。

次いで、その氷から氷の薔薇が咲き誇り、三重に施した結界の内二枚を砕いた。

魔術を多少なりとも扱える者なら、この魔術にどれだけの魔力が込められているか、分かるはずだ。

本来なら、軍団級魔術。魔力が続く限りあらゆるものを氷漬けにする死の吐息なのだから。

集まっている貴族たちが息を呑み、その魔術の真価を推し量る。

十分に時間を与えてから、私は魔術を解除した。

氷の欠片すら残さず、何事もなかったかのように。

魔術に覚えのあるものは、その精密な魔力捜査にぐうの音も出ないであろう。

分かるものだけが分かればいい。

そういう意図をもって、結界魔術も解除した。


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