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第一王子の狂気

魔族王都、ペンテシレア王国内王宮にて。

この国の第一王子たるファルムスは、王都内全土に広がる噂を耳にして忌々し気に歯ぎしりしていた。

神童?十五階梯魔術?

そんなもの嘘に決まっている!

王子として生を受け、毎日のように時期王たる資格を磨き続けてきた。

勿論魔術の練習だって、怠ったことはない。

しかし、今の自分が扱える魔術は五階梯。

毎日!日々魔力を消費し続け、教師に教えを請い、血のにじむような鍛錬をしてきた自分が、才能なしのレッテルを貼られているかのような、そんな焦燥と嫉妬に心の中が闇に飲まれそうになる。

十五階梯。

本当に到達しているなら、化け物だ。

だが、噂によると件の公爵令嬢は凄まじい美貌の持ち主だとか。

そうだ、所詮は女だ。

どんな化け物だろうが、手なづけられればこちらの物。

父はインキュバスの魔族だ。

当然、自身にも同じ血が流れている。

魅了、誘惑魔術ぐらい、お手の物だ。

ちょっと誘惑して見せれば、簡単に未来の妃になるに違いない。

そうなれば戦略級魔術の使い手を手に入れたも同然。

精神支配して利用するだけしてから捨てればいい。

俺が天才なんだ。俺は優秀なんだ。

俺以外の人間が、神童と持て囃されるなどあってはならない!


「ファルムス王子殿下。ミドラー家から招待状が届いております」


爪を噛み、嫉妬に狂う彼のもとに、齎されたチャンス。

レイチェル・フォン・ミドラーのお披露目パーティ。


「わかった。参加すると父上に伝えてくれ」


にっこりと、内に秘めた禍々しい嫉妬の心を押し殺して王太子然と振舞う。

一介の執事が、十二歳にして身に着けた王太子の仮面を見破れなかったのも無理はない。

印象操作魔術。

インキュバス系魔族が呼吸をするように扱える生まれ持った才能。

そこに誘惑魔術と魅了魔術を重ね掛けすれば、どんな女も思いのままだ。

そう、王子は信じて疑わなかった。

自身の血統に自信を持ちすぎるあまり、自分より強い相手にレジストされた場合のことなど頭の片隅にもなかったのだ。

勿論、こんな企てを神獣にランクアップする寸前のエルノアが把握していないはずもない。

だが、第一王子は傲慢に笑みを浮かべる。

自身の生まれ持った魅力と、その力を信じて疑いもしなかった。

この時、少しでも彼に冷静さが残されていれば、格上の相手に魅了魔術など通用しないと分かったはずだ。

だが、嫉妬に狂う王子に、冷静になれと助言をくれるものはなく。

狂気を身に宿した王子の笑い声が部屋に響いた。


レイチェルのお披露目パーティまで残り一週間。



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