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女神アフロディーテ転生する
美の女神アフロディーテ。
その美貌は神の中でも特別美しく、性格も穏やかで誰にでも優しい理想の女神。
それが私だった。
地上界でも私を信仰するものは多く、おかげで神力も他の女神とは比べるべくもなかった。
そんな女を男が放っておくはずもない。
神界の男性神は殆どがアフロディーテに従い、侍り、契りを交わすことを夢見た。
けれど、他の女神達の嫉妬の心は凄まじかった。
どれほどの美男子が心を傾けようと、決して心を動かされないアフロディーテ。
しかし、それでも彼女の美しさと神力が、男の心を掴んで離さない。
それを面白く思わない他の女神たちが、アフロディーテを神の座から引きずり降ろそうと手を組んだ。
神界で唯一、神を人間へと貶める強力な呪いの呪具の封印を解き、アフロディーテに従う男性神の不意を突き、その呪具を彼女の胸に突き立てた。
アフロディーテは神力で呪いに抵抗したが、やがて体を蝕まれ、死ぬ。
そして転生した。
魔族の公爵令嬢として。
死ぬ前に持っていた神をも堕とすその美しさをその身に宿したまま。