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4.本との出会い

思っていたよりも筆が進んだ(?)ので、忙しくなるまでは2日に1回のペースで投稿しようと思います。

「アメリア嬢はこの後予定ある?」

 

 美味しいスイーツに満足して店を出た後,ルーカス様にそんなことを聞かれてしまった。

 

「私ですか?特にありませんけど……」

 

 そこまで言いかけてルーカス様が良い笑顔になったのに気づいて慌てて口を噤む。

 が,時すでに遅し……

 

「それなら,おすすめのお店があるから,一緒に行かない?」

 

 とそれはそれは素敵な笑顔で言われてしまった。

 スイーツの恩がある手前,断りにくいし……。

 でも,婚約者がいるのに他の男性と出かけるのは良くないよね?

 

「さっきも言ったけど,エドワードはこれくらいで気にする人じゃないし,友人同士の交流を婚約者が口出しする権利なんてないでしょ?」

 

 どうしてこの人はこんなにも人の心を読むのが上手いのだろう……。

 いや,今はそんなことより……

 

「確かに一理ありますわ。」

 

 殿下は私が何をしてようが興味なんてないだろうし,ルーカス様の言っていることは当たっているのかもしれない。

 それでも,それでもね……。

 やっぱり,他の人の口からも私のことを気にしてないって言われるのは,ちょっと悲しいな。

 

「ごめん,悲しませるつもりで言った訳じゃ無いんだけど……。アメリア嬢が気に病まないようにって思って。それにエドワードはアメリア嬢のこと……,っとこれは本人の口からが良いかな?」

 

 最後の方はいまいち解釈することができなかったけど,どうやら慰めてくれてるみたい。

 

「殿下が私に微塵も興味がないことははなから承知していますわ。そうですわね,ルーカス様のおすすめのお店に是非行ってみたいですわ。」

 

 殿下のことを気にしすぎるのは良くないよね。

 あっちだって私のことを厄介だと思っているだろうし,令嬢の防波堤くらいにはなるかもしれないけど。

 

「うーん,どうしてそう思ったのかはわからないけど,……取り敢えず,移動する?」

 

「そうですわね」

 

 気がつくと,私たちの周りには人がだんだん集まってきていた。

 多分,ルーカス様の見た目に釣られたんだろうなぁ。

 いやまぁ,わかるよ?

 わかるんだけどね……。

 これじゃ話しにくいし,視線が痛い。

 ということで早速ルーカス様のおすすめのお店に向かうことにしよう。

 

 *

 

「ここは……!」

 

 まさかの連れてこられたのは書店だった。

 ルーカス様のことだからどこかカフェをチョイスするんだと思ってたからものすごく意外だった。

 私,書店って初めて来たかも!

 普段はエマにお使いを頼むことが多いし,学園にいる間は貴族街の隅までくる機会なんてほとんどないしね。

 初めての書店に目をキラキラさせていた私は,ルーカス様のクスッという笑い声でハッと我に帰る。

 

「喜んでもらえたようで何よりだよ。」

 

 今日は恥ずかしいところばっかり見られちゃってるなぁ。

 

「書店に来たのは実は初めてで……,とても嬉しいですわ!連れてきていただき,ありがとうございます!」

 

 本当,ルーカス様には感謝しかない。

 

「まだ本も見てないんだから,お礼を言うには早いよ。アメリア嬢は歴史書が好きだったよね?ここには他国のものもあるよ。」

 

「それは本当ですの!?」

 

 え、すっごく嬉しいんですけど。

 私は時代小説が大好き。

 だけど,学園の図書館にあるのは限られているし,王宮にはもっと沢山の本があったけど,自国のものがメイン。

 他国の小説なんて,流通していないのがほとんどだったから,私も中々読むことができずにいた。

 

「もちろん本当だよ。ほら,あそこなんかそうじゃない?」

 

 ルーカス様の指を指した方には,この国の言葉ではない,要は他国の言語で書かれてある本があった。

 本当だ……!

 まさかここで出会えるなんて。

 私はすぐにそこまで駆け寄ると,ずらっと並んだタイトルを一つ一つ確認していく。

 『建国秘話』『偉人の足跡』『軌跡を辿って』……どれも面白そう!

 って、これって……

 一つだけ明らかに年季が入っている本が目に留まる。

 私が目を付けたのは,『聖女神話』という本。

 どこかで聞いたことがあるような気がするんだけど,どこだったっけ……?

 

「あぁ。その本って確か,隣国で有名な童話だよね。」

 

「……っ!?」

 

 真剣に見ていたからか,すっかりルーカス様の存在を忘れていた私は耳元で急に話しかけられて,驚いてしまう。

 

「アメリア嬢が本が好きなのはわかるけどさ,俺を置いて走っていかないでよ……」

 

 あ,私一目散にここに来ちゃったから,ルーカス様を置き去りにしてたんだ……。

 

「ごめんなさい,つい浮かれてしまって……」

 

「うん,アメリア嬢だしね。しょうがないか。」

 

 なんか妙に納得されているのが心外ではあるけど,私が悪いから何も言い返せない……。

 それに今は……

 私は本の方に再び目を移す。

 これ,もしかしたらエマが言っていた本かも。

 エマは隣国出身で,私が小さい頃によく童話を寝る前に聞かせてくれていた。

 その中の一つに,隣国の歴史を大きく変えた聖女様のお話があった。

 確か,本当はもっと長い話だけど,童話として短くまとめられたのって言ってたな。

 じゃあ,これが原本……?

 エマの話してくれた中で一番好きだったのが聖女様のお話だったから,もしそうなら……

 

「ルーカス様,私これを買いますわ。」

 

 是非読んでみたい!

 

「気に入ったものが見つかってよかったよ。」

 

 いつものように優しい笑顔で微笑んでくれるルーカス様が今日はいつにも増してカッコよく見えたのは,きっとこの本に出会わせてくれたからだろう。

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