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3.限定スイーツ

「アメリア嬢は,よくここに来るの?」

 

 ニッコニコの笑顔で私に問いかけてくるルーカス様。

 ルーカス様になら,言っても大丈夫かな。

 

「このお店に来るのは初めてですが,実はスイーツに目がなくて……。先ほどもルーカス様の提案に飛びついてしまって,お恥ずかしい限りですわ。」

 

 貴族の令嬢がスイーツが好きって言うのは別に珍しいことではない。

 ただ問題なのは……

 

「そんなことはないよ。さっきも学園では見れない一面が見れて嬉しかったし。でも意外だったな,スイーツを求めて下町にまで来てるなんて。」

 

 うぅ,またそんな恥ずかしいことをすぐ口にするんだから。

 私はティーを口に運びながらホッと一息をつき,頬の熱をなんとか収める。

 そう,私の心配事はスイーツが好きなことがバレてしまうことではない。

 スイーツではなく場所が問題なのだ。

 ここはまだ貴族街の近くだし,ギリギリ言い訳ができる立地ではあるが,貴族の特に女性が簡単に平民街……下町に来ることはあまり良しとされていないのだ。

 だから私はいつもよりも軽めの服装で,馬車だってなるべく地味なのを選んだ。

 このエリアまでは貴族も普通に来ることがあるから,逆にお忍びってわかるようにした方が何かと都合が良いんだけど,もっと郊外へ行くんなら話は別になってくる。

 ルーカス様は,そのことを心配してくれていんだろう。

 幾らスイーツが好きでも、これ以上は進んだらいけないよって忠告の意味も込めて,ね。

 

「いえ,普段は貴族街の方を回っているんですが,今回はとても有名なお店があると聞いてここまで足を運んだんですの。」

 

 だから,心配しなくても大丈夫だよーって伝えたつもりだったけど,ルーカス様は困ったように笑う。

 あれ,何かいけなかったのかな?

 

「それなら良いんだけどね。まあもし下町のお菓子が食べたくなったら俺に言ってよ。アメリア嬢の為なら,買いに行くからさ。」

 

 なんて優しいんだろう!

 本当にどっかの誰かさんとは大違いだ。

 なんて,口に出してしまったら不敬罪で捕まってしまうんだろうけど。

 確かルーカス様のお家は下町をよりよくする為に尽力されてるんだとか。

 きっと,何度か行ったことがあるんだろうな。

 だからそこ,私が訪れることがないように配慮してくれているんだと思う。

 悲しいことに,この国にスラム……とまではいかないけど,それに近い住宅街があるのは事実だ。

 誤って迷い込んでしまっては大変なことになってしまうだろう。

 私も誘拐されることだってあるだろうし,そのせいで犯人の罪が重くなってしまう可能性も,ある。

 貴族の命の方が,大事にされちゃってるからな……。

 

「ありがとうございます。でも,お気持ちだけ受け取っておきますわ。私,下町に行く予定はありませんもの。」

 

 でもね,ルーカス様に迷惑をかけるのは違うと思うんだ。

 

「アメリア嬢は……,いや,下町に行かないって言うなら今はいっか。」

 

 公爵令嬢がこんな下町ギリッギリまでスイーツを求めてきているのは正直あまり宜しくは無いんだけど,ルーカス様はあまり気にしていないみたい。

 流石,器が違うと言うか柔軟な考えを持ってると言うか……。

 

「お待たせしました。こちら,限定スイーツになります。」

 

「……っ!」

 

 待ってました!

 うわぁ,美味しそう!!

 私の目の前にはブルーベリーがふんだんに使われたタルトが!


「すっごく美味しそう!」

 

 多分今までで一二を争うくらい綺麗な見た目をしている。

 ブルーベリーが一粒一粒輝いていて,赤いソースと見事にマッチしている。

 見た目もハート型で可愛いし!

 ……って,ハート形!?

 

「……気がついた?」

 

 少し悪戯っぽく言うルーカス様に,確信犯め……と恨んでしまったのは仕方がないだろう。

 うん,私は悪く無い。

 まさか限定スイーツが,『恋人』限定スイーツだなんて,誰が気づけるだろうか。

 

「もう,こんなことして変な噂が立っても知りませんからね。」

 

 お店で恋人限定のものを婚約者同士でもない私たちが頼むなんて,周りからどう思われても文句は言えないのに……。

 

「ごめんね,言うのすっかり忘れてた。でも,まあ……スイーツに罪はないでしょ?」

 

 この人,絶対私のことからかって面白がってる……。

 これ食べたら,噂になっちゃうよね……?

 けど……。

 私は目の前に置かれているスイーツに目を向ける。

 ……スイーツに罪はないのは本当だし,それはそれ,これはこれだよね?

 注文しちゃってる時点でもう手遅れだし,食べない方がもったいないよね??

 私は自分にそう言い聞かせることにした……否,スイーツの欲に逆らうことはできなかった。

 

「……っ、美味しい!」

 

 一口食べてみて,私の気分は一気に上昇っ。

 こんな美味しいの,初めて食べたかも。

 もちろん,このお店で注文したスイーツは全部美味しかったけど,これは群を抜いて美味しい!

 

「喜んでもらえたようでよかった。」

 

 今回はルーカス様の策略に見事にハマってしまったけど……,でも今回だけは……。

 

「このスイーツに免じて,黙っていたことは水に流しますわ。」

 

「ありがとう。」

 

 優しく微笑むルーカス様を横目に,私はスイーツを美味しく頂いたのだった。

 まぁ,美味しかったし……。

 今日はもう何も考えないことにしよう……。

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