2.太陽の公爵様
「うーん」
私は軽く伸びをして,今日のことに想いを馳せる。
なんと今日は,人気のスイーツ店の予約が取れて,食べに行くことになっている。
それで私は朝からとてもご機嫌だった。
「お嬢様,髪型はいかがなされますか?」
支度を整えてくれてるエマがニコニコしながら聞いてくる。
「じゃあ,ハーフアップにしようかしら。この前とても素敵なバレッタを友達から頂いたから,それを付けられるように!」
私がうっきうきでエマにそう告げると,「わかりました!」と元気な返事が返ってきたので,エマも今日のスイーツを楽しみにしているのが伝わってきて,私まで笑顔になる。
「……いかがでしょうか?」
エマにそう言われて,鏡に映った髪を見てみると,ハーフアップはハーフアップでも,毛先が緩く巻かれていて,それがお花型のバレッタとよくマッチいていて,とても素敵な仕上がりになっている。
「素敵……!ありがとう,エマ」
それで私の気分はさらに上がる。
上機嫌でお礼を言いと,「素材がいいからですよ」なんて褒められてしまった。
*
「ここが……!」
支度を終えた私は早速カフェへと向かった。
馬車に揺られてしばらく経つと,馬車が停車して,ドアが開かれた。
そこで目にした光景にちょっと感動を覚える。
だって,人気店だよ!?
やっと予約取れたんだよ!?
浮かれないわけないじゃん!
私はすぐさま店のドアに手をかける。
その瞬間……
「アメリア嬢……?」
不意に声を掛けられたことで,私は声のする方向に視線を移す。
そして,そこに立っていた人物を見て驚きを隠せなかった。
「……ルーカス,様。」
声をかけてきたのは,ルーカス・カーター様と言って,私と同じで親が公爵の位を持っている人。
ゆくゆくは爵位を継ぐ身で,もちろん学術も剣術もとても優秀で,学園でも女子から絶大な人気を誇っている。
紺色の髪に,ルビーのような赤い瞳。
髪は耳元にかかるくらいで,襟足が少し長め。
センター分けをしているからか,私と同い年だけど,少し大人っぽい感じがする。
そしてそのフレンドリーな物腰から,殿下とは対象に,太陽の公爵様なんて異名を持ってる人でもある。
そんな,素敵な人なんだけど……,
「偶然だね,こんなとこで会うなんて。……良かったら,少し話せるかな?」
私はこの人と会うのが,今は非常に気まずかった。
だってルーカス様は……,
「……もしかして,予約してた?それなら俺もこのお店に入る予定だったし,なんなら『限定スイーツ券』も持ってるんだけど。一緒にどう?」
「是非ご一緒させてください!」
『限定スイーツ券』!?
何その素晴らしい響きは!
これは一緒に入るしかない!
……だって私は,スイーツには目がないもの。
だから,思わず目が輝いてしまったのも無理はない……と思いたい。
そんな私の様子にルーカス様はクスッと笑うと,良かったと意味深な笑みを浮かべたんだ。
わぁ,美形が笑うと,更にかっこいい。
……て,ちょっと待って。
そこで私は我に帰る。
私……,この人に告白されたんだよな。
私が後悔したのは,とんでもないことを思い出してしまったから。
一緒にいて,誤解されたりしないかな?
そんな不安が頭をよぎる。
「……大丈夫だよ。別に婚約者がいても,『友人』と食事をして何か言われるわけないから。」
そしてそれが顔に出てしまったからか,ルーカス様はニッコリと優しく微笑んでくれる。
告白した相手にも関わらず,『友人』と言って私が気負い過ぎないように配慮してくれてるのがわかり,私は自分が恥ずかしくなってしまう。
そう,だよね……,私が考え過ぎて距離をとってしまったら,ルーカス様を傷つけてしまうよね。
それに私達は親友って言っても過言じゃないくらいに仲が良かった。
告白されたから……という理由で避けちゃうのは,良くないよね。
ルーカス様もそれを覚悟の上でおっしゃってくれたのかもしれないけど,関係が悪化しないことが一番だと思うし……。
何よりも……
『でも,君には婚約者がいるから,返事はいらない。
ただ,俺の気持ちを知って欲しかったんだ。だからどうか,今までの関係のままでいたい。』
そう,言ってくれたから。
その言葉に甘える……というわけではないけど,本人がこう言ってる以上,返事をするわけにもいかないし,私は友達として彼のことは好きだから,今までの関係でいられるなら,それが一番。
「……そうですわね。では改めて,ご一緒させて頂いても,宜しいですか?」
私は最低限の礼を尽くして,ルーカス様に尋ねる。
「もちろん!」
すると彼は,嬉しそうに笑ってくれる。
その笑顔を見てると,なんだか私まで嬉しくなれたんだ。