4人と1匹
その日の夜は暗闇に包まれていた。空に月がなく、星も厚い雲に隠されていたからだ。鬼族はすべて深い眠りに落ちていた。もっとも周囲を警戒して武器を抱えてはいたが・・・。彼らのいる森の中は不気味なほどの静寂と言い知れない重苦しい空気が充満していた。
その場所に密かに近づく5つの影があった。漆黒の闇の中、その姿と気配を消していた。一人は剣を持つ者、もう一人は魔法の棒を持つ者、3人目は短剣と扇を持つ者。4つ目は4つ足の獣。5番目は仮面をかぶった者、それぞれが殺気を放っていた。
やがて小屋の一つの扉の前に来た。そこはゾルダやその取り巻きの鬼たちが休んでいる。先頭の者は剣を抜いて扉に手をかけた。そして開けるや否や、剣を振りかざして中に入って行った。
「バーン!」
大きな音が鳴り響き、剣を持った男が外に飛ばされてきた。仲間の4人はすぐに後ろに下がって身構えた。
「貴様ら! 我らを襲撃しに来たのだな!」
小屋の中から剣を持ったゾルダが出てきた。彼は眠っている中でも油断せず、剣が振り下ろされる音に反応して襲撃者を剣で跳ね飛ばしたのだ。
「なんだ!」「どうした!」
他の鬼たちも騒ぎを聞きつけて集まってきた。その飛ばされた男は何事もなかったかのように立ち上がって剣を構えた。
「我らは『勇者とゆかいな仲間たち』。俺は勇者ノブヒコだ」
すると仲間の3人と1匹が横に並んだ。
「同じく、魔法使いのミキ!」
「同じく、踊り子のアリシア!」
「ウギャア! ウギャア!」
「天よ聞け! 地よ聞け! 人よ聞け! 俺は戦いの猛者! ラインマスク見参!」
戦隊ヒーローよろしく名乗りを上げた。暗闇で顔ははっきり見えないが、その様子からして昼間の奴らに違いないとゾルダは思った。彼は悔しそうに大声を上げた。
「お前たちではないと信じたのに・・・。やはり貴様らだったのか!」
「ふふふ。俺らを信用していたのか? 馬鹿な奴め!」
「おのれ! 許さぬ! 者ども! 奴らを生きてここから帰すな!」
ゾルダは剣を振り上げて叫ぶと、鬼たちが武器を持ってパーティーに襲い掛かっていた。剣を持った男はニヤリと笑って言った。
「お前たち鬼を皆殺しにしてくれる!」
襲撃者のパーティーはひるむこともなくは鬼族を迎え撃った。武器が交錯して金属音が鳴り響き、火花が飛ぶ。腕自慢の鬼たちが束になってかかって行っているが、打ち倒すどころか、かえって押されている。
「何をしている! こいつらは仲間の仇だ! 集落を灰にした奴らだぞ!」
ゾルダが苦戦している鬼たちに声をかけた。するとその前に仮面の男が立った。
「俺様が貴様の相手をしてやろう!」
「よかろう! この剣を食らえ!」
ゾルダは仮面の男に向かって剣を振り下ろした。だがそれはさっとかわされた。
「まだまだだ!」
ゾルダは素早く剣を返して、何度も斬り込んでいくがすべて避けられている。仮面の男は余裕綽々で動き回り、ついには向かってくる剣にパンチを放った。すると剣は「バリン!」と砕けてしまった。ゾルダは信じられなかった。こんな強い男がいるとは・・・
「ふふふ。驚いただろう。だが殺しはせぬ。せいぜい痛めつけてやる!」
仮面の男はいきなり回し蹴りを放った。その衝撃でゾルダは地面に叩きつけられた。
「悔しいだろう! お前たちをいたぶってやる! せいぜい恨め!」
仮面の男は倒れているゾルダを足蹴にしていった。ゾルダは立ち上がることもできず、苦痛で顔をゆがめていた。
他の鬼たちも殺されてはいないが、やはり打ちのめされて倒れていた。そこにパーティーの者たちが踏みつけていった。大きな屈辱に鬼たちは泣き声のようなうめき声を漏らしていた。
その時、「バーン!」「バーン!」「バーン!」と周囲の木々に雷が落ちた。辺りが一瞬、明るく照らし、襲撃したパーティーの者たちの顔が浮かび上がった。
「お前たちは・・・」
ゾルダは気づいた。剣の男は勇者ノブヒコではない。ミキもアリシアも偽物だと。雷が落ちた木々は燃え上がり、辺りを照らしていた。そこに新たに4人と1匹が現れた。
「これ以上の非道は許さん!」
それは紛れもない本物の勇者ノブヒコ率いる「勇者とゆかいな仲間たち」だった。




