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テレパシー

 俺はテレパシーで勇者ノブヒコと連絡をとることにした。少し遠いが何とかつながるかもしれないと期待を込めて。


「ソウタか! 大丈夫か!」


 何とか勇者ノブヒコとつながった。


「ああ、大丈夫だ! 心配かけて悪かった。」


 するとそこにミキが割り込んできた。


「ソウタの心配なんか、していないわ! 多くの人が行方不明になったから気になっただけよ。いい気にならないでね!」


 久々のツンデレだ。よほどミキは心配していたのだろう。ミキがさらに話そうというのを、今度は勇者ノブヒコが割り込んできた。


「ミキは黙っていてくれ。ソウタに詳しい状況を聞くから・・・あっ。」

「私だって気になるから!」


 向こうで何か騒ぎの音が聞こえる。ミキが怒って取り乱し、アリシアが抑えていて・・・そっちはそっちで大変そうだ。しばらくしてまた勇者ノブヒコとテレパシーがつながった。


「どこにいるんだ?」

「森の中の小屋だ。俺は気を失っていてよくわからないが、みんなの話ではリアナ村へ行く山道から少し入ったところのようだ。」

「みんな? では他の人もそこにいるんだな。」

「そうだ。よくわかったな。」

「ライムの町に鬼族から脅迫状が届いている。多数の人間を拉致したから、勇者のパーティーを引き渡せと。俺たちはそれを聞いてすぐにライムの町から出てきた。町の外で様子を見ていたところだ。何が起こったのか、詳しく話してくれ。」

「わかった。実は・・・」


 俺はこれまでのことを話した。鬼族の村が俺たちの偽物のパーティーに襲撃されて壊滅して人間に復讐しようとしていること。ホバーバスの乗客が鬼族に拉致されたこと。その人たちを人質にそのパーティーを捕まえて復讐し、ライムの町も襲撃しようとしていること・・・。


「どうもジョーカーが絡んでいるような気がするな。」


 勇者ノブヒコもそう感じていた。


「俺もそう思う。多分、奴らが企んだのだろう。俺たちと鬼族を戦わせるために。」

「それはともかく、これからどうするかだ。」

「リーダーの赤鬼のゾルダと話したが、人間を信じていない。話し合いでは無理だ。平和的に解決が難しいかもしれない。」

「そうか。それなら・・・」

「待て! ここで鬼族と争って無理に人質を取り戻しても禍根が残るだけだ。」


 ここで鬼族と戦うのだけは避けねばならない。そんなことになれば一層、事態が悪化する。それはジョーカーの思うつぼだ。だからと言ってこのままでは人質が殺されていくのだが・・・。俺にはいい考えは浮かんではいないが、それでもそのうちに何か突破口が見つかるかもしれない。


「何かいい方法があるはずだ。鬼族を納得させる・・・」

「ソウタの話では時間が経つと鬼たちは人質を殺していくのだろう。そんな悠長に構えてられない。」

「それはそうだが・・・」

「人質を見殺しにはできない。俺に考えがある。ソウタはそこで待っていてくれ。」


 そこでテレパシーは途切れた。勇者ノブヒコたちは俺たちを助けに来てくれるだろう。だが悪い予感がしてならないのだ。こんなことが的中するのは定番だからだ。


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