表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/182

遅かった

 俺はおやっさんと並んで森の中をホバーバイクを走らせていた。地面を浮いて走るから凸凹の地面でも揺れも少なく軽快だった。


「ライムの町はあの丘の向こうだ!」


 おやっさんは正面を指さして大声で言った。だがその時、俺に耳には「うわー!」という悲鳴が聞こえていた。その声には聞き覚えがあった。


(あの声はカワミさんだ!)


 そんな遠くの声がなぜ聞こえたのか、俺にもわからない。だが確かにカワミさんの声だった。俺はすぐにホバーバイクを停めた。


「どうした?」


 おやっさんもホバーバイクを停めて俺に尋ねた。


「カワミさんが襲われています!」

「なに! 本当か!」

「ええ、聞こえたのです。おやっさん。俺は戻ります! おやっさんはここで待っていてください」

「ああ、気を付けて行けよ!」


 おやっさんは俺の話を信じてくれて送り出してくれた。俺はホバーバイクを急反転させて森の中の来た道を戻った。悪い予感が次々にわいてくる。


(間に合ってくれ!)


 と心の中で祈っていた。



 だが遅かった。俺がホバーバイクで駆けつけて小屋のドアを開けると、中にはすでにクモ怪人とスレーバーがいた。そしてカワミさんはぐったりして床に横たわっており、その首には細い糸の束が巻きついていた。それはこのクモ怪人が吐いたものに違いない。


「やはりお前たちか!」

「戻って来たのか! これで手間が省けた。お前も抹殺してくれる! やれ!」


 するとスレーバーが向かってきた。こんな雑魚どもは変身しなくても倒せる。しかし狭いところでは暴れられないから、俺はすぐに小屋の外に出た。しばらく走って止まって振り返り、両手で身構えた。するとスレーバーが追い付いてきて俺に襲い掛かってきた。俺は「待ってました」とばかりにパンチやキックで次々に倒していった。変身前の状態でも俺はそこそこ強い・・・という設定なのだ。


「おのれ!」


 スレーバーたちの不甲斐なさにクモ怪人が襲ってきた。俺は飛び上がってその攻撃を避けると身構えた。いよいよ変身だ。この瞬間を待っていた!


「ラインマスク! 変身! トォーッ!」


 変身ベルトが浮かび上がり、俺は空中でラインマスクに変身した。そして近くの岩の上に降り立った。クモ怪人がそれを見てうなる。


「うぬぬぬ! 貴様は!」

「天が知る。地が知る、人が知る。俺は正義の仮面、ラインマスク参上!」


 俺は名乗りをしてやった。それで俺は言いしれない高揚感に包まれた。だが辺りはまるですべったようにシーンとしている。驚くはずのクモ怪人も訳がわからず、ただきょとんとしているだけだ。奴のリアクションがやはりうすい。


(セリフは間違っていない。なにか違うのか?)


 まあ、俺の名乗りがうまくなかったのかもしれない。次までに練習して・・・などと思いながら岩から飛び降りた。するとすぐにクモ怪人が襲ってきた。相も変わらず両手の爪でひっかこうとしていた


(ワンパターンな奴だ!)


 俺は隙を見てキックを奴の腹に放った。すると後ろによろけた。俺がそこに飛びかかろうとしたら糸を吐き出した。これが奴のとっておきの武器に違いない。俺は慌てて飛びあがってそれを避けた。クモ怪人はさらに糸を吐き続ける。辺りが白くなるほどだ。


(どうするつもりだ?)


 俺が地上に着地するとクモ怪人は消えていた。奴は自分の糸に紛れて逃げてしまったようだ。今回も必殺技を放つ機会を逃してしまった。


「逃がしたか!」


 俺は右手のこぶしを握り締め、悔しそうなポーズを取った。これはお決まりだ。ヒーローにはこんなことはよくある。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ