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異変

「もうすぐ王女様がホールに戻る。」


 俺はすぐに勇者ノブヒコに連絡した。向こうでは王女の帰りを首を長くして待っていることだろう。すると、


「わかった。入り口で出迎える。刺客がいるかもしれないから警戒してくれ。」


 と返事が来た。後から聞いたところではホールではまだアンヌ王女を狙う刺客がいたらしい。そいつらも勇者ノブヒコたちやあのギース聖騎士団が撃退したらしい。ホールに帰っても気が抜けない状況であるのは確かだ。


 とにかくこれでアンとお別れだ。アンは俺の三歩前をしっかりした足取りで歩き、黙ったままホールに向かっている。もう言葉を交わすことなどできないのか・・・。

 やがてホールの入り口の前に来た。そこには執事や勇者ノブヒコやミキやアリシア、そしてギース聖騎士団が待っていた。別れの時が近づいてきた。そこでアンは足を止めた。だが俺の方に振り返ろうとしない。


「ありがとう・・・さようなら。」


 アンの言葉はそれだけだった。かすかに聞こえるその声に俺はうなずくしかなかった。彼女はまた歩き出して入り口の前に立った。勇者ノブヒコが前に出て頭を下げた。


「アンヌ王女です。帰ってきました。あなたは?」

「私は勇者ノブヒコです。王女様の護衛に参っております。」

「それはご苦労。あなたがあの有名な勇者ノブヒコでしたか。引き続きお願いします。」


 その言葉を聞いて勇者ノブヒコの態度は一変した。


「それはできない! お前を斬る!」


 勇者ノブヒコはいきなり剣を抜いた。驚いたアンは「きゃあ!」と悲鳴を上げて後ずさりした。俺はその様子に驚いた。全く何が起こっているのかわからなかったが、とにかくすぐに勇者ノブヒコの前に立ちふさがった。


「何をする!」

「そこをどけ!」


 勇者ノブヒコは真剣な表情をして剣を振り上げている。今にも斬りかかろうとする勢いだ。その奥ではアリシアが執事に向かって短剣を突きつけ、ミキも魔法の杖を向けていた。そばにいるギース聖騎士団の剣士も驚かずに同じように剣を抜いていた。


「一体、どうしたんだ!」


 勇者ノブヒコの目を見てみたが操られている様子はない。彼はアンを斬ろうとしていた。彼女は俺の背後で震えているのがよくわかった。


「君は俺が守る!」


 俺は後ろにいるアンにそっと声をかけた。そして勇者ノブヒコに言った。


「この人を斬らせるわけにいかない!」


 いざとなれば短縮バージョンでラインマスクに変身しようと俺は身構えた。こうなったら仲間を倒してでも彼女を助けようと俺は決意を固めた。



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