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出会い

(まあ、よかったか。気が進んでいなかったからな・・・)


 俺はそう思いながら外に出た。用もないのでアキバレーシングに戻ろうとした。すると角から飛び出してくる人と()()()ぶつかった。それは深く帽子をかぶった若い女性だった。ぶつかった拍子に彼女はハンドバッグを落としていた。


「大丈夫ですか?」


 俺はハンドバッグを拾ってやり、彼女に渡した。


「あ、ありがとう・・・」


 彼女は軽く頭を下げてそれを受け取るとすぐに歩き出した。かなり慌てているようだ。しかし何を思ったのか、急に方向転換して俺の方に戻ってきた。


(ぶつかったから文句でも言われるのか?)


 だがそうではなかった。彼女は俺の腕を取り、


「お願い。私の恋人の振りをして・・・」


 そう耳打ちした。そして俺の体に密着して歩き出した。顔を俺の胸で半分隠しながら・・・。そのままでは不自然なので必然的に俺は彼女の肩を抱くことになる。

 すると前からはギース聖騎士団の剣士が歩いてきていた。彼らはこのホールの周囲を警護のために巡回している。


(この女性はこいつらに見つからないようにしたかったのか。)


 だが彼女がなぜそうするのかはわからない。訳アリなのかもしれない。しばらくはこのまま付き合うしかない・・・俺は彼女の肩を抱いたまま歩き続けた。警護の兵ともすれ違うが特に怪しまれることもなく、俺たちはホールから離れた場所まで歩いた。


「どうもすいません。こんなことを急に頼んでしまって・・・」


 彼女は俺から離れた。俺にはこの彼女の行動からピンと来ていた。


(もしかしてこの人は・・・)


 こういった場合、物語にあるような「高貴な人のお忍び」だ。そうであるならこのまま一人にしておけない。


「君はこの町の人じゃないよね。どうしてこの町に? 旅行?」


 俺はカマをかけてみた。すると彼女は「えっ!」という顔をしていた。


「ええ、ちょっとこの町を見物したくて・・・」

「どこに行くの?」

「それはいろいろだけど・・・よくわからなくて・・・」


 彼女は辺りを見渡してそわそわしていた。俺の見るところ、彼女はあまり外に出たことがない様子だった。


「それなら案内するよ。ホバーバイクに乗せてあげるよ。」

「それは助かります!」


 彼女は笑顔になって喜んでいた。一人で出てきたのはいいが、不安になっていたのだろう。


「じゃあ、ホバーバイクのところまで行こう。ええと・・・」

「アンです。あなたは?」

「ヤスイ・ソウタ。ソウタと呼んでくれ。」


 その道すがら、俺はアンにライムの町のことを話した。彼女は楽しそうにそれを聞いていた。でもアンもこの町のことをよく知っていた。


「実は小さい頃、この町にいたの。何だか、懐かしくなって。」

「そうか。」

「いろいろ見て回りたいと思っていたの。」


 こうして俺はアンとライムの町を観光することになった。


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