謁見
ライムの町の通りを大型のホバーカーの一行が走り抜けていった。その周囲には護衛のホバーカーやホバーバイクが取り巻いている。厳重な警備態勢だ。アンヌ王女の訪問は秘密だったから、町の者は何が起きたかと、窓から首を出して見ていた。
やがて一行は町の大きなホールの前に停まり、アンヌ王女やその護衛たちは静かに中に入って行った。ここは迎賓館のような役目もする。彼女のために廊下や部屋は磨かれ、美しく飾られていた。
俺たちはホールの1階でアンヌ王女の来着をずっと待たされていた。周囲のあまりのピリピリした緊張感でおかしくなりそうだった。気晴らしに何かを話そうものなら、町の職員が飛んできて、「シーッ! お静かに。」と注意してくる。
それで俺やミキやアリシアは少しイライラしていた。だがその点、勇者ノブヒコは悠然としている。さすがに場慣れた感じだ。こんな態度でも身につけないと大物になれないのかもしれない。
やがて俺らは職員に連れられて「謁見の間」らしい場所に通された。そこは正面に御簾のようなものがかかっており、その奥にかすかに人影が見えた。多分、アンヌ王女だろう。そして側面には護衛の剣士が物々しく並ぶ。その中にあいつらがいた。
(ぎょえ! ギース聖騎士団だ!)
奴らは勲章をつけた制服を着てふんぞり返っていた。国王直属であるのをいいことにやりたい放題する連中だ。この連中とは関わり合いになりたくなかったが・・・。
俺たちは勇者ノブヒコを先頭にして前に出た。そして片膝をついて礼をした。それと同時に横に並ぶ執事が紹介した。
「Sランクのパーティー『勇者とゆかいな仲間たち』です。あの有名な勇者ノブヒコ殿が率いております。この度の護衛にと・・・」
「こんな得体のしれない連中を護衛とは笑わせます。国王陛下から信任熱いギース聖騎士団がいれば怖いものはありません。この連中は早速引き取らせてください。」
執事の説明の途中で、ギース聖騎士団の隊長らしい男が割り込んできた。やはり嫌な連中だ。だが執事がきっぱりと告げた。
「すでに王家で決めたことだ。意義は認められない。」
それを聞いてさすがにギース聖騎士団の隊長も何も言えなかった。
「では御挨拶を。」
執事に促され、まず勇者ノブヒコが頭を下げた。
「勇者ノブヒコです。我らのお任せください。後ろにひかえるのは我が仲間です。」
「ミキと申します。」
「アリシアです。」
最期は俺の番だ。こんな時、やはりあの癖がどうしても出てしまう・・・。
「相川良です。よろしく。」
するとあの隊長らしい男が烈火のごとく怒りだした。
「貴様! 王女様の前で何ということを言うのだ!」
籠異世界で「相川良」の名前を言えば相手はおかしな反応をするのはいつも経験していたが、怒られたのは初めてだ。この異世界の人にはこの名前がどんな風に聞こえているのか、全く見当がつかない。
「まあまあ、ゴルジ隊長。」
執事はなだめようとするが、
「こんな奴が王女様の護衛でいいのか!」
とゴルジ隊長の怒りは解けそうにない。辺りは不穏な空気に包まれそうに・・・そんな時、勇者ノブヒコが俺に耳にささやいた。
「すまない。今回は君は遠慮してくれ。」
「わかった。迷惑をかけた。後を頼むぞ。」
俺は慌ててその場から逃げるように去った。




