表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/182

おやっさん

 その時、トントントントンと小屋のドアを叩く音がした。俺は身構えた。敵が襲ってきたのではないかと・・・。だがカワミさんはほっとした顔になっていた。


「大丈夫だ。アキバだ。来てくれたんだ」


 カワミさんはドアを開けに行った。多分、魔法で透視ができるのかもしれない。

 ドアを開けるとさっと一人の中年の男が入って来た。作業着のようなツナギを着て、白髪頭で優しそうな顔をしていた。この人がアキバさんなのかもしれない。


「カワミさん。大丈夫だったか?」

「ああ。大丈夫だ。それより彼だ。彼は・・・」


 カワミさんはアキバさんに今までのいきさつを話した。俺がジョーカーに改造されたこと。今までの記憶を失ってしまったこと。怪人を振り切ってここまで逃げてきたことなど・・・。


「わかった。ソウタ。もう大丈夫だ。いっしょにライムの町に戻るぞ」

「ええ・・・。アキバ・・・さん・・・ですね」

「何を他人行儀な! 気持ち悪いぞ! いつものように『おやっさん』と呼んでくれ!」


 俺の戸惑った顔を見てアキバさんは笑って肩をポンと叩いた。「おやっさん」・・・これはラインマスクを助ける立川藤平を相川良がそう呼んでいた。確かに人の好さそうで小柄な中年男という点では「おやっさん」にぴったりだ。


「わかりました。おやっさん! でも俺のことは相川良と呼んでください。 そう呼ばれた方が今の俺にはしっくりくるので」


 そう呼んでもらえたらより一層、ヒーローになり切ることができて心躍るだろう・・・思って言ったのだが、おやっさんは渋い顔をした。


「相川良? なんだそりゃ? 変な名前だな。そんなことよりすぐに行くぞ! ソウタ!」


 おやっさんが俺の肩をポンと叩いた。やはり「相川良」とは呼んでもらえないようだ。しかし「相川良」ってこの異世界ではそんなに変な名前なのか・・・。仕方ないから「ヤスイ・ソウタ」でいくしかない。

 俺はカワミさんに「さよなら」を言って小屋を出た。おやっさんはホバーバイクに乗ってきていた。それはかっこいいロゴのついたカウルがついており、ピカピカに磨き上げられていた。


「特別製だ。いいだろう。」

「ええ、いいバイクですね。」


 俺はそう答えて自分のホバーバイクにまたがった。すると周囲に何か違和感を覚えた。誰から影からじっとこちらを見ているような・・・。俺はすぐに辺りを見渡した。おやっさんは俺を見て怪訝な顔をした。


「どうした?」

「誰かに見られているような気がします。」

「なに!」


 おやっさんも周囲をぐるりと見渡した。辺りは静まり返って、鬱蒼と木々が茂っている。不気味な雰囲気はある。

 だがしばらくしても何も起こらなかった。俺は確かに何者かの視線を感じていた。それは森の中の獣のものだったのか・・・。


「気のせいじゃないのか?」

「そうかもしれません」


 俺は少し気がかりだったが、そのままホバーバイクを走らせた。だがその不安は的中していた。確かに何者かが森の中からこちらをうかがっていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ