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報酬

 とらえられた人たちを連れて俺たちはライムの町に戻った。多くの人が出迎えて喜んでいる。こういう晴れやかな場所も悪くない。歓声を上げる人たちに答えてヒーローの俺は何かを言わねば・・・と思っていると、勇者ノブヒコが前に出た。


「出迎えの皆さん! この勇者ノブヒコが北の森の地下のダンジョンを攻略し、魔物を退治しました。こうしてとらわれていた人々を救うことができて感無量です・・・」


 勇者ノブヒコはまるで自分の手柄のように話し出した。確かにこのパーティーのリーダーは彼だが・・・。そういうことをしているから勇者ノブヒコの名声が高まるのかもしれない。

 しばらくして立派な髭をつけた年配の男が現れた。宮廷服に多くの勲章・・・えらい人なのかもしれない。後で聞いたところ、この町の冒険者ギルドのトップだそうだ。


「この度はよくやった。『勇者とゆかいな仲間たち』よ。この功績によりこのパーティーをSランクとする。」


 これを聞いて観衆が歓声と拍手を送った。一気にこのパーティーはこの国のトップ5に入ったわけだ。こんなメンバーで・・・。俺はあきれていたが、勇者ノブヒコは満面の笑みで観衆に答えていた。



 今回は時間もかかり苦戦したが、まあ賞金も稼げたし、よしとするか・・・。俺はペロを連れてアキバレーシングに戻った。おやっさんは心配してくれていた。


「無事でよかった。3日間、帰ってこなかったから心配していたんだぞ!」

「どうもすいません。ちょっとてこずったものですから・・・」


 俺はダンジョンでの戦いを話した。


「そうか。大変だったな。でもよかったな。たくさん報酬が出たのだろう。」

「ええ、金貨3枚もらいました。 ペロの分は預かって来ました。」


 金貨3枚はアキバレーシングの1か月のバイト代ぐらいだ。それだけあれば今月は金の心配をせずに暮らせる。だがそれを聞いておやっさんは怪訝な顔をした。


「金貨3枚? 本当か?」

「ええ、それが何か?」

「多分、すべてを解決したから金貨100枚、いや200枚は出ているはずだが・・・」


 俺はそれを聞いて、


(あの野郎! やりやがったな!)


 と思いつつ、そっとため息をついた。多分、経費だとかなんだとかで一人当たりの報酬がそれだけになったと勇者ノブヒコは言うだろう。どの世界でもトップは人を安く使おうとするのだから・・・。雇われる身はあきらめるしかない。


(まあいい。ジョーカーの悪企みを阻止できたのだから・・・。この俺がいる限りジョーカーの勝手にはさせん! 金貨、いやもとい、人々の平和のため俺は戦う!)


 俺は決意を新たにした。


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