勇者の剣
「素晴らしい戦いだった。いいものを見せてもらった！」
「勇者ノブヒコ！」
そこに現れたのは予想通り（？）勇者ノブヒコだった。その顔はやはり吹きかけられた胞子で真っ白で無表情のままだ。だが浸食したカビでかなりパワーアップしているのはわかった。
「勇者ノブヒコ！ しっかりするんだ！ お前は操られている！」
俺はそう声をかけるが、そんなことで正気に戻るわけはない。彼はゆっくり剣を抜いた。
「やめろ！」
「問答無用！」
勇者ノブヒコは剣を振り上げて向かってきた。剣は上の階に置いてきたため、俺は素手だ。だが俺はラインマスクだ。素手で戦うことがラインマスクの本来の姿だ。勇者ノブヒコは剣を振るってきたが、俺はそれを避けてパンチを放つ。だがそれは当たらない。勇者ノブヒコはさっと身をかわして剣を振り下ろしてくる。俺はそれを真剣白刃取りで受け止めた。こんなこと、ラインマスクの優れた運動神経だからできるのであって普通なら真っ二つにされていただろう。
「剣さえつかまえれば、後はあの技で・・・」
俺はラインフィーバーで勇者ノブヒコを侵食するカビをやっつけようとした。しかしその前に、
「ファイヤーボール！」
を放たれて俺は壁にまで飛ばされた。胸の辺りが焦げている。
（忘れていた。勇者ノブヒコは魔法を使えるのだった・・・）
勇者ノブヒコは剣での直接打撃のみではない。ちょっとした攻撃の魔法、剣に威力を与える魔法などが使えるのだ。だから厄介だ。彼の剣と魔法攻撃を潜り抜けてラインフィーバーを発動しなければならない。
ペロは俺たちの戦いを見守っていたが、がまんができなくなったのだろう。勇者ノブヒコに向かって行った。
「あっ！ ペロ！ やめろ！」
俺はペロを止めようとした。いくらグレートウルフ化したペロでも、カビでパワーアップした勇者ノブヒコに敵うわけはない。案の定、すぐに斬られて倒れた。
「ペロ！」
俺は叫んだが、ペロは動こうとしない。やられてしまったようだ。
「おまえ！」
「ふふふ。お前もあのようになる！ さあ、かかってこい！」
勇者ノブヒコは挑発する。こうなれば掟破りのあの技を使うしかないのか・・・俺は迷っていた。
「考えている暇はないぞ！ それ！」
勇者ノブヒコは向かってきた。剣に炎の魔法がかかっている。あれに触れれば体が燃えてしまうかもしれない。俺は決心した。あの技を使うと・・・。ポーズをとってエネルギーをラインベルトに集めた。
「ラインフラッシュ！」
膨大なエネルギーがラインベルトから放出された。それに飲み込まれた勇者ノブヒコの体が一瞬、燃え上がった。
「ううっ！」
勇者ノブヒコは声を上げてばったり倒れた。パワーを加減したからダメージはそこそこのはずだ。中のカビを抑えられたらOKなのだから・・・。
「これですべて倒したはずだ。残るは・・・」
後はラスボスのはずだ。それは・・・・。
