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森の中の小屋

 ジョーカーの基地から、ラインマスクに変身した俺とカワミさんはスターストリームに乗って逃げた。戦っていたクモ怪人は追って来ようとしなかった。俺たちは森の中をひたすら突っ走り、やがて小さな小屋にたどり着いた。


「ここまでくれば、一旦は大丈夫だろう。」


 そこはカワミさんが隠れ家として使っている小屋のようだった。魔法で作ったのか、森の中の小屋としては小綺麗だった。俺はそこでやっと変身を解いた。すると体の緊張が解けたのか、ほっとする気がした。そばにあったスターストリームも元のホバーバイクに戻っている。


「やはり君だったのか。逃げられてよかった。さあ、中に」


 カワミさんはラインマスクの正体に気づいていたようだ。俺は勧められるがままに恐る恐る小屋に入った。中はひんやりして薄暗く、何か不気味な感じがした。


「火を燃やしたりしたら奴らに気付かれるかもしれない。がまんしてくれ」


 カワミさんは俺の気持ちを察したのか、そう言った。そして魔法でカップに温かいお茶を満たして渡してくれた。


「これでも飲んでくれ」


 俺はそれを受け取った。だがそれを飲むことはできなかった。受け取ったとたん、俺の手の中でカップが「パリン!」と粉々に砕け散ったのだ。気が付かないうちに俺はとんでもない力を得てしまったのだ。

 普通なら「俺の体はおかしくなってしまった」とか「俺は怪物になってしまった」とか悩むだろう。だが俺は心の中でワクワクしていた。


(改造された相川良と同じだ! 大丈夫だ。気を付けて力をコントロールしさえばいい)


 カワミさんにおかしく思われないように、にやにやするのを必死に抑えた。その姿が悲壮に見えたのかもしれない。カワミさんはすまなそうに言った。


「君には申し訳なかった。すべて私のせいだ」

「えっ? それはどういうことです?」

「私はジョーカーのたくらみを知っていた。有能な若者を連れ去り、基地で改造することを。君が捕まった時、私は君を助けなかった。ジョーカーの基地を発見するためにそのままにしたのだ。そのため君が改造されてしまった。間に合わなかったのだ。許してくれ!」


 どうりであのタイミングで助けに来られたわけだ。体は改造されてしまったが、脳改造されなかったし、前世の記憶が残っていたから「よし」としよう。


「俺は気にしていません。しかし・・・」


 俺はそんなことよりこれからどうすればいいのかが気になった。山田学の記憶はあるが、この異世界で生きているヤスイ・ソウタの記憶はないのだ。どこに行って、どうして生きていけばいいのか、わからなかった。


「これから俺は?」

「心配はいらない。アキバを呼んだ。」

「アキバ?」


 またあの名前が出た。一体、アキバとはどういう人なのか・・・


「アキバレーシングクラブの監督だ。君の育ての親だ」

「えっ!」


 また知らない事実が・・・。この異世界の記憶が消されているから当然であるのだが・・・。


「ここに迎えに来てもらうことになった。魔法でアキバに伝えた。すぐに来るだろう。君はライムの町に戻るんだ」

「あなたは?」

「ここに娘のミキを呼んだ。彼女も魔法使いだ。2人してジョーカーを探る。私たちはあの恐ろしいジョーカーの野望をくじきたいのだ!」


 俺にはそれが危険に思われた。あんな怪人のいる組織をただのおっさんが探るなんて・・・。いくら魔法使いだと言っても。


「危険です。いっしょにライムの町?に行きましょう」

「大丈夫だ。私を誰だと思っている。1級の魔法使いだ」


 1級?・・・それがどれほど強いのか、俺にはわからなかった。ただ怪人とはまともに戦えなくても逃げることはできるのかもしれない。


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