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冒険者ギルド

 冒険者ギルドの前はいつものようにヤバそうな連中がたまっていた。勇者ノブヒコは物怖じせずドンドン中に入って行った。俺はその後についていくだけだ。ふと気づくとアリシアがペロを抱いてきていた。


「ペロなんか連れてきてどうするんだ?」

「えっ? 勇者ノブヒコが連れて行こうといったからよ。必要なんですって。」


 アリシアはそう答えた。俺にはわからないが勇者ノブヒコには考えがあるのかもしれない。


 ドアを開けて中に入るとそこにはテーブルが並べられ、冒険者らしい人たちが座っていた。こっちをにやにやしながら見ている。一癖も二癖もありそうな連中だ。俺たちは奥のカウンターに向かった。そこにはその場所に似つかわしくない若くてかわいい感じの女性が待っていた。受付の職員のようだ。


「ようこそ。冒険所ギルドへ。キリアがお話を伺います。」

「これはどうも。パーティーの登録に来ました。手続きを頼みます。」

「お名前を教えていただけますか?」

「勇者ノブヒコです。」

「まあ。勇者ノブヒコ様ですね。これはどうも失礼しました。」


 さすがは勇者ノブヒコ、この業界では名前が売れている。この分ではスムーズに手続きができそうだ。


「ここに必要事項をお書きください。」

「わかりました。」


 勇者ノブヒコは出された書類にさらさらと記入していく。なかなかな達筆だ。そういえば彼はたまに通行人からサインを求められたことがあった。それに備えて普段から字を練習しているのかもしれない。

 書類を書き終わった勇者ノブヒコはキリアに渡した。彼女は書類を確認して読み上げていった。


「パーティー名は『勇者とゆかいな仲間たち』ですね。」


(おいおい。もっと他になかったのか!)と俺はツッコミを入れそうになった。これでは厳しい冒険をするどころか、ほのぼのした旅になりそうだ。


「パーティーのリーダーは勇者ノブヒコ様。職業は剣士。そしてカワミ・ミキ様。職業は魔法使い。ケイコ・アリシア様、職業は踊り子・・・」


 キリアはそこまで言って急に笑いがこみあげてきたようだ。次は俺のはずだが・・・。


「・・・相川良・・・様ですね。フッフ・・・職業は道化師ですね・・・」


 やはり相川良という名前はこの異世界ではそんなにおかしいのか・・・せっかく勇者ノブヒコが気を利かしてその名を書類に書いてくれたのに・・・そして職業、道化師とは・・・他になかったのか・・・俺は不満げな顔をしていた。それを見て勇者ノブヒコが俺にそっと耳打ちした。


「他にソウタに合うような職業はなかったんだ。がまんしてくれ。」 


 それなら仕方がない・・・俺は受け入れることにした。だがキリアの読み上げはまだ続く。まだメンバーがいたのか・・・。


「ペロ様。ええと・・・キングウルフですね。以上5名で間違いないですね。」


(ペロがパーティーのメンバー? 何かの間違いか・・・)


 俺がそう思っていると、また勇者ノブヒコがまた耳打ちしてくれた。


「パーティーは5人組以上だったんだ。他にいなかったからペロを借りた。魔獣でもいいっていうから・・・」


 俺は(あまりにも数合わせすぎるだろ!)とツッコミたくのを何とか抑えた。勇者ノブヒコはそこまでして今回の仕事を受けたいらしい。


「では受け付けましたら手続きをします。後で証明書をお渡しします。しばらくお待ちください。」


 キリアはそう言って奥に入って行った。俺たちはここでしばらく待つことになる。



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