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誘い

 アキバレーシングに勇者ノブヒコが訪ねてきた。ミキとアリシアも伴っている。また厄介なことでもしようというのか・・・。


「今日は何の用だ?」

「ソウタを誘いに来た。冒険者ギルドの仕事の依頼を受けようと思ってな。それがパーティーでの仕事なんだ。」


 勇者ノブヒコの中では俺は彼のパーティーの一員となっている。しかしまた知らない言葉が出てきた。


「冒険者ギルドって何だ?」

「我々冒険者の組合ってところだ。金に困らないように仕事の依頼をしてくれる。」

「ふ~ん。」


 冒険者もただ冒険をしているだけではない。日々の糧を自らの手で得なければならないようだ。これはヒーローも同じ。俺もアキバレーシングの手伝いをして食いつないでいる。

 勇者ノブヒコは話を続けた。


「今までは私個人で依頼を受けていたが、今度の仕事はパーティーでないとだめだっていうんだ。それでこの際、冒険者ギルドに正式に登録しようと思ってな。ソウタはもちろん来てくれるんだろう。」


 そういうことだから、俺を誘いに来たらしい。まだ仕事内容は聞いていないが、冒険者の仕事ってどうせ魔物退治とかだろう。正義の味方がすることとは思えない・・・俺はそう思った。


「俺なんかいなくてもいいだろう。お前にミキとアリシアがいれば十分だろう。」

「それが必要なんだ。君が。実は・・・」


 勇者ノブヒコが話し出した。最近北の森で行方不明になる人が多い。魔獣に襲われたのか、何者かに拉致されたのかはわからない。その調査をするということだ。だがその仕事の依頼を受けたパーティーも消えているそうだ。もしかすると強い魔物が絡んでいるのかもしれない。もしそうだとしたらこの3人だけでは心配だということで俺にも来てほしいらしい。


「もう何人、それも冒険者も含めて人が消えていることか・・・こんなことは今までなかったことだ。」

「もしかしてそれは・・・」


 今まで起こらなかった事件・・・そんなことをするのはジョーカーしか考えられない。横で聞いていたおやっさんも同じ意見らしく、俺の顔を見て大きくうなずいていた。それならば俺は行かねばならない。


「わかった。いっしょに行こう。」

「引き受けてくれてよかった。ではいっしょに北の森に行こう。その前に行くところがある。ソウタも来てくれ。」

「どこだ?」

「冒険者ギルドだ。そこで登録して仕事の依頼を受ける。登録にはパーティー全員がそろわないとならないんだ。」


 この異世界でも事務手続きは必須らしい。そんな紙切れ1枚のことが重要だと思っているのはお偉い官僚だけだと思っていたが・・・そんなことはどうでもいい。俺は勇者ノブヒコからもっと詳しい話を聞いた。

 この依頼を受けられるのはDランクのパーティーだけだそうだ。パーティーは仕事をこなした実績などでランクが付けられる。普通はFランクから始めるのだが、実績のある勇者ノブヒコがパーティーにいるから最初からDランクに登録できるようだ。

 勇者ノブヒコが今回の仕事を引き受けたいのはCランクになりたいからだ。この件をこなせばCランクになれるという。冒険者ギルドが扱う危険で本格的な大仕事、例えば魔獣や魔物退治の依頼はCランク以上のパーティーしか受けられない。勇者という肩書がある以上、魔物を倒さねばならないと考えているようだ。


「冒険者ギルドってどこにあるんだ? ここから遠いのか?」

「ん? この町にもあるぞ。知らなかったのか? 通りをまっすぐに行ったところだ。」


 確かにヤバそうなやつらがたまっているところがあった。絡まれて厄介なことにならないように近づかなかったが、そこが冒険者ギルドだったのだ。


「大きな町なら冒険者ギルドはある。それがあるから俺たち冒険者は旅が続けられるんだ。」


 俺は納得した。やはりこの異世界はRPGの要素を過分に持っている。俺は冒険者の一人として生きていくしかないのか・・・。

 ともかく俺たちは冒険者ギルドに行くことになった。このパーティーを正式に登録するために・・・。


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