森に帰る
ペロはキングウルフの顔を悲しそうに舐めていた。キングウルフはなんとか最後の力を振り絞ってペロに力を分け与えたようだ。そしてガクンとなって息絶えてしまった。
俺は変身を解いてそのそばに行った。ペロが「クゥイーン・・・クゥイーン・・・」と泣いている。俺は慰めようとペロの頭を撫でてやった。その時、俺はペロの奥底に何かの力の存在を感じた。ペロがグレートウルフを束ねる次のキングウルフになるというのか・・・。
ペロの周りに力を吸い取られてふらふらになったグレートウルフたちが集まってきていた。それを見て勇者ノブヒコが言った。
「ペロは仲間とともに森に帰って森の王者になるのだ。父親の跡を継いで。その幼い身で。」
俺は(それはライオンの王様の話かい!)とツッコミを入れそうになった。だがこの手の話はよくあるのかもしれない。俺だって前世で別の2つの同じような物語を見たことがある・・・ということはどうでもいい。
ペロは「ヴァン! ヴァン!」と俺たちに最後の挨拶をするとグレートウルフたちと森に戻っていった。
「がんばれよ!」
俺たちはペロたちウルフの群れを姿が見えなくなるまで見送っていた。
◇
俺はアキバレーシングの店のソファに座ってぼんやり外を眺めていた。それは俺ばかりではない。おやっさんもロコも、シゲさんもジロウもそうだった。ペロがいなくなって皆はロスになって気が抜けてしまったのだ。ロコが何気なくつぶやいた。
「今頃どうしているのかしら?」
「仲間たちと仲良く暮らしているだろう。」
おやっさんはため息交じりにそう答えた。すると「ヴァン! ヴァン!」という吠え声が聞こえてきた。気のせいかと思ってみたが俺には聞こえる。
「吠え声が聞こえますよ。」
「気のせいだ。ペロのことを考えているからだ。」
おやっさんはそう否定したが、やはり吠え声が聞こえる。
「やっぱりペロだ!」
ロコが店のドアを開けた。するとそこにはペロが尻尾を振って座っていた。
「ペロ!」
ロコがうれしくなって抱き上げた。
「お前どうしたんだ? 森の仲間はいいのか?」
俺は思わずペロに尋ねていた。するとペロはジロウに向けて念のようなものを飛ばした。それでジロウは操られてしゃべりだした。
「森の方は仲間が守ってくれています。僕はもう少しここで修業することにしました。森の王者としてふさわしくなるために・・・」
「そうか! それならよかった。また一緒にいられるな。」
おやっさんは大喜びしていた。もちろんロコもシゲさんも、操られているジロウだって喜ぶはずだ。俺もうれしい反面、ある疑問が浮かんだ。
(ここにいて修行になるのか? ただ皆にかわいがられているだけだが・・・)
それはともかくペロは皆に次々に抱きあげられて、うれしそうに尻尾を振っていた。その姿を見ると、(まあ、いいか・・・)と思うしかなかった。




