必殺技
このままでは体を食いちぎられてしまう。絶体絶命のピンチだ。だがその時だった。
「バーン!」
と大きな衝撃を受けて俺は地面に転がり、何とか牙から逃れることができた。顔を上げるとキングウルフが立っていた。奴がスーパーオオカミ怪人に体当たりをして助けてくれたのだ。
だがキングウルフは無事でいられなかった。怒ったスーパーオオカミ怪人は立ち上がるとキングウルフをボコ殴りし始めた。パワーを増したそのパンチはキングウルフに内臓がつぶれるほどの深いダメージを与えていた。
やっと気の済んだスーパーオオカミ怪人が離れる時には、キングウルフは口から血を吐いてぐったりとして虫の息だった。心配したペロがそばに寄るがもう動くこともままならない。
「キングウルフなど所詮、パワーアップした俺様に対してはこんなものだ。思い知ったか!」
スーパーオオカミ怪人は言い放った。そこには「クゥイーン・・・クゥイーン・・・」と泣くペロの声しかしない。俺の怒りはマックスになった。右肩の痛みなど吹っ飛んでしまった。
「貴様! なんということを・・・。このラインマスクが許さん!」
立ち上がった俺は身構えた。
「手傷を負った貴様など相手にならん! さっさと倒してやる!」
スーパーオオカミ怪人はゆっくりと近寄ってきた。俺は戦う気は満々だが、冷静にこの状況を考察してみた。ラインフラッシュなどというとんでもない技を使ったことと右肩のダメージの回復に魔法力を大量に消費したので残りが少ない。これを増幅して打撃力に回してもラインキックを放てるかどうかだ。今のスーパーオオカミ怪人ならラインキックでは倒せないかもしれない。そう考えたら俺に勝ち目はない。しかしラインマスクは多彩な技を持つという設定がある。あの技なら残った魔法力で倒せるかもしれない・・・ということを俺は必死に考えるあまり、ブツブツ呟いていたようだ。
「何をブツブツ言っている! これで死ね!」
スーパーオオカミ怪人がパンチやキックを放ってきた。俺はそのスピードに何とかついていき、打撃を食らわぬようにさっと奴の背後に回った。そして奴の体をがっちりと捕まえた。
「何をする!」
「こうするんだ!」
俺はスーパーオオカミ怪人を力いっぱい投げ上げた。そして俺自身も、
「トォーッ!」
と思いっきりジャンプする。そして空中でまたスーパーオオカミ怪人を捕まえてそのまま空高く上がって行く。高く上りつめたところで俺は奴を勢いよく地面に投げ落とした。
「ラインスローシュート!」
すると加速がついて奴は地面に激突した。さすがに膨大な打撃力をもつ奴でもこれではひとたまりもない。
「ドッカーン!」
と大爆発を起こして四散した。俺は空中で大きく回転して着地した。
(きまった!)
俺はジーンと来ていた。TVのラインマスクではかなり複雑そうな技に見えて、俺にはできないと思っていた。だが見事に決まったのだ。それもピンチの場面で。
戦いを余裕で傍観していたサウロン伯爵もこれには驚いたようだ。小刻みに震えるステッキで俺を指しながら言った
「見事な技だ。誉めてやろう。しかし次はお前の命はない。」
そしてまた周囲に爆発を起こして煙幕を張るとマントを翻してそのまま消えていった。俺は魔法力が少なくなっており、奴を追うことはできなかった。




