禁じ手
前回と同じでこのまま戦っても勝負がつかないだろう。強力なキングウルフをどう屈服させるか・・・。この状況ではあの手を・・・。ここは大人げないが、禁じ手を使わせてもらう。俺は握りしめた拳を前でクロスし、腰のラインベルトにパワーを集中させた。
「ラインフラッシュ!!」
強烈なエネルギーがラインベルトから放出された。TVのラインマスクも何度か、強大な敵を相手に使っていた。凄まじい威力で劣勢を一気に挽回できる。ただ難点は多くのエネルギーを使ってしまって後の戦いに支障が出てしまうことだ。TVのラインマスクも変身が解けてしまって命からがら逃げる場面もあった。
幸い、魔法力は多く残っているから、ガス欠は心配ない。ラインフラッシュを使ってもしばらくは戦えるだろう。無様なことは回避されるに違いない。
ラインフラッシュは見た目も派手な技だ。あまりのエネルギー量にまぶしくて目が開けていられないほどだ。それは接近してきたキングウルフを飲み込んだ。
「グオーン!」
悲鳴にも聞こえる声を残し、奴は光の中に消えていった。ようやく目を開けていられるようになると、地面に倒れているキングウルフが目に入った。強大なエネルギー波を浴びて立ち上がれないほどのダメージを受けて、その姿はボロボロになっていた。死ぬところまではいっていないが、もう戦闘不能だろう。勝負はついたはずだ。
(これで奴に話を聞いてもらえる。)
俺はキングウルフにゆっくり近づいて行った。するとその時、アリシアに抱かれているペロがその腕から抜け出して走り出し、俺の前に立ちふさがった。
「ギャン! ギャン!」
全身の毛を逆立てて威嚇している。俺がキングウルフのとどめを刺すと思ってのかもしれない。幼い身で必死に親を守ろうとしているのだろう。ウルフとしての強い家族愛がそうさせているのかもしれない。
そんなペロをキングウルフが前足でどかした。俺がとどめを刺すときに巻き添えにならないようにと・・・。奴は覚悟を決めたようだ。敗者として死を受け入れることに・・・。だが俺はそんなことは望んでいない。
「よく聞け! キングウルフ! 俺はお前を殺しはしない。誤解が解ければそれでいいと思っているんだ。さあ、そこの子供のウルフと森に帰るといい。」
俺はそう言ってやった。するとキングウルフは一度、目をつぶってからゆっくり頭を下げた。ペロもその意味を理解したのか、喜んでキングウルフのそばに寄ってその顔をなめていた。キングウルフもうれしそうにそんなペロを撫でていた。誰が見てもほほえましい光景だ。
(これでこの親子は安泰だ。)
俺はほっとした思いだった。これでウルフたちはそろって森に戻り、町は平和を取り戻す・・・ハッピーエンドで終えられると。




