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新たな仲間

 一応、ジョーカーは追い払ったが、後味は悪かった。恵子は美智代の亡骸にすがって泣いている。ここはヒーローがなぐさめてやらねば・・・変身を解いて彼女のもとに行こうとした。だが俺より先に勇者ノブヒコが彼女に声をかけていた。


「彼女には気の毒だった。君の悲しい気持ちはよくわかる。だがいつまでも泣いていては彼女が浮かばれない。きっと彼女は君に強く生きて欲しいと思っているはずだ。」


 勇者ノブヒコがそう声をかけると恵子は泣くのをこらえた。さすがは勇者だ。こんなときの対処は心得ている。さらに勇者ノブヒコは言葉を続けた。


「あの世でも彼女は好きな歌を歌って踊るはずだ。さあ、元気を出せ! 君も彼女のために歌ってやるんだ。彼女をあの世に送り出すために・・・。」


 すると恵子は顔を上げた。


「私・・・歌います。」


 すると彼女の中からまた曲の前奏が流れた。これも聞いたことはあるが・・・。


「春一番が掃除したての・・・」


 これはキャンディーズだ・・・とツッコミを入れたくなったが、俺はあえて黙っていた。それはあのセリフを言うためか・・・。やがて曲を歌い終わり、恵子が大声で言った。


「普通の女の子に戻ります!」


 ハニーレディをやめるということか・・・俺は聞いてみた。


「これからどうするんだ?」

「やってみたいことができたの。だからこの世での名前のアリシアに戻ってやりたいことをするの。」


 すると勇者ノブヒコは大きくうなずいた。


「それがいい。彼女も応援してくれるだろう。」

「でもジョーカーが恵子、いやアリシアを狙ってくるんじゃないの?」


 そこにミキが疑問を挟んだ。勇者ノブヒコはまた大きくうなずいた。


「安心してくれ。この勇者ノブヒコがこの世界を巡って、必ずジョーカーを叩き潰す!」


 彼はまるでジョーカーを倒せるのは自分しかないと言わんがばかりだった。勇者はこんな自信満々でないと務まらないのかもしれない。しかしこの光景を見ているだけでは俺の影は薄くなる。俺もヒーローとしての存在を示さねばならない。


「ラインマスクが彼女の仇は私がきっと取る。」


 だが恵子改めアリシアは勇者ノブヒコの方を向いた。彼の言葉の方が説得力があったのかもしれない。


「私も連れて行って! 私も冒険の世界に飛びこみたいの!」

「えっ!」

「私もこの世界を巡りたいの。」

「しかし危険だぞ。」

「わかっているわ。でも私だって戦える。命を懸けるわ。お願い。」

「そこまで言うなら・・・。よし、わかった。君をパーティーに加えよう。我がパーティーにようこそ。」


 勇者ノブヒコが右手を差し出した。アリシアは笑顔になって握手した。これでパーティーの仲間が増えた。

 しかしこのままでいいのだろうか・・・俺は自問していた。これではRPGになってしまう。俺は孤高の変身ヒーローものを目指していたはずだが・・・。


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